今回は、1960年代のアメリカ軍熱帯用戦闘服を分析します。
いわゆるジャングルファーティーグの最初期モデルですね。
外観上では後のモデルと大きく違っているのが特徴です。
中古品で残念ポイントもありますが、程度は良好ですよ!
目次
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1 アメリカ陸軍トロピカルコンバットコート(ジャングルファーティーグ・1st)とは?
太平洋戦争で日本軍と戦ったアメリカ軍は、太平洋の島々を巡る戦いで、自分たちの熱帯における装備が不十分なことを痛感しました。
そして戦後、軍縮の波を受けながらも、早々に熱帯装備の開発を進めます。
またインドシナ戦争によるフランスの敗北と、それに続く南北ベトナムの対立では、社会主義(共産主義)の拡大が看過できない状況となりました。
そこで1961年にアメリカは、南ベトナムへ軍事顧問団(という名目のゲリラ掃討部隊)を派遣して、北ベトナムと対峙します。
その時に彼らから得られたのは、インドシナにおける次の戦争開始と、可及的速やかな熱帯装備の開発でした。
それを受けて、加速度的に開発された熱帯用戦闘服(コンバットコート)が、今回のモデルになります。
いかにも熱帯用と思われる、薄い生地で製造されたこの戦闘服は、兵士の間でも大人気でしたね。
さてさて、それはどんな戦闘服だったのでしょうか?
今回は、ベトナム戦争のアメリカ軍装備マニアのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
まず目につくのは各ポケットのボタンですね。
全て表出しになっています。
背面
ウエストのサイズ調整タブに注意!
前面裏側
よく見ると、左右ポケットの中には小さなペンポケットが縫い付けられています。
背面裏側
襟周りレイアウト
前合わせはボタンのみですが、フラップが装備されています。
サイズタグ
品名タグ
1963年度契約品です!💕
データタグ
エポレット
ボタンで開閉
1st(最初期)モデルの特徴であるエポレットと艶のあるボタン
胸ポケット
2個のボタンで開閉
ポケットフラップ付け根にはペンポケット用のスリット(左右とも)があります。
ポケットの中にはペンポケットが!
腰ポケット
こちらも2個のボタンで開閉
ウエストの調整タブ(左右にあります。)
袖
ボタンで開閉・調整
袖口はボタンで開閉
左袖後部の穴
何かガサガサしたものを脇に挟んだのでしょうか?
まあ、無事な個体は少ないですよね!😭
おまけ
以前分析した別のモデル
前面
サブデュードの陸軍タグ
階級章の縫い付け跡も。
特技兵のようです。
・サイズ S-S
・各部のサイズ(平置)
着丈 約73cm
肩幅 約46cm
身幅 約57cm
袖丈 約55cm
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3 その特徴とは?
生地はオリーブグリーンに染められたコットンポプリンで、軽量かつ通気性が良いです。
このモデルは、その後のモデルに比べて、最も軽い生地で製造されています。
そのため通気性や速乾性は抜群ですが、どこかに引っ掛けると破れ易かったようですね。
また、一度破れると、際限なく破れ目が拡がっていくという問題もありました。
そのため後のモデルでは、リップストップという処理が加えられた、やや厚い生地が採用されましたよ。
デザインは、第二次大戦中に採用された空挺部隊用のジャケットを参考に、不必要なパーツを排したものになっています。
デザイン比較
今回のモデル
第二次大戦中の空挺ジャケット
デザインはよく似ていますね。
最初期または試作品には、ベルトも存在したようですよ。
構成は、エポレット付き、胸ポケット×2、腰ポケット×2のコートタイプで、前合わせの裏には、別のフラップが設けられています。
これの用途は、風除けとか毒ガス除けとか言われていますが、正確な所は不明です。
(後に廃止されました。)
今回のモデルはエポレットがあり、ボタンは艶のあるボタンの表出しで、ウエストには調整タブがありますが、後のモデルではこれらのパーツは次第に廃止されていきましたよ。
(今回のモデルは「機動戦士ガンダム」でいうところのRX–78と同様、最も贅沢なモデルと言えます。)
全体的な縫製は、やや雑ですが強度は抜群のアメリカ軍スタンダードですね。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1963年
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 コットン
表記サイズ M-R
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約78cm
肩幅 約49cm
身幅 約59cm
袖丈 約60cm
状 態 中古上品
官民区分 官給品
入手場所 岐阜の専門店
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
それまで軍事顧問団が使用していた、大戦中のヘリンボーン(杉綾織)シャツや、ダックハンター迷彩服は、いずれも生地が厚く通気性は最悪、濡れると暫く乾かないことで不評でした。
また、その後に採用されたユーティリティジャケットも、根本的な解決には至りませんでした。
(映画「ワンスアンドフォーエバー」で主人公他が着用していたジャケットです。)
でも今回のモデルが開発・支給されたことで、戦闘服の性能、機能も各段にアップしたようですよ。
しかし、同時に欠点も明かになり、後のモデルでは改良が加えられていきました。
(一度採用すると何十年も同じものを使用するという、当時の自衛隊とは大違いですね。)
さて、この1stモデルですが、当時の官給品で程度の良いものは、年々減ってきています。
もはや絶滅危惧種と言っても過言ではありません。
もし程度の良いものを見つけたら、資金と相談して取り敢えず入手しておきましょう!
(パッチ(ワッペン)付きなら、価値も倍増です!)
後日、きっとオーナーを助けてくれますよ!
単色衣料なのでサバイバルゲームや狩猟、野鳥観測には向いていないかもしれません。
でも逆にファッションに使用してみてはいかがでしょう?
また、少ない官給品をカバーすべく、精巧なモデル品も発売されていますよ。
実用にはそちらを購入するのが良いようですね。
私は官給品のデッドストックか、フルカラーフルパッチの中古極上品を探してみたいと思います。😃
今回は、アメリカ軍のトロピカルコンバットコートの1stモデルを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20240808更新)
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参考:今回のモデルのデザインの基になった空挺ジャケットはこちらです。⬇︎
ベトナム戦争におけるの他のアメリカ軍装備はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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