今回は、1950年代のアメリカ空軍のジャケットを分析します。
数少ない空軍独自装備ですね。
残念ながら、現在は使用されておらず、用途廃止になっています。
かなりの使用感のある中古品です。
閲覧注意でお願いします。
目次
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1 アメリカ空軍ラインジャケット(4883A・セージグリーン)とは?
アメリカ空軍のシステムを導入している軍隊では、必ず航空機整備兵という職種があります。
文字通り航空機を整備している兵士なのですが、大きく2種類に分ける事ができます。
ひとつは、いわゆる専門員と呼ばれる、レーダーならレーダー、武器なら武器、油圧なら油圧など、航空機の各機能別に分かれ専門的に整備を行う者。
もうひとつは、列線整備員と呼ばれる航空機の発進、帰投時における点検など行う者です。
この列線整備員をAPG(エアー・プレーン・ジェネラル)と言います。
列線整備員は、常に航空機と共にあり、飛行前後の点検や軽微な整備、パイロットのサポート、航空機発着時の誘導、燃料補給、無線チェック、エンジンの暖機運転などを行います。
主に屋外で作業するため、常に日射や寒気に晒され、ジェットエンジンの排気やプロペラ後流を受けたりするなど、航空機整備兵の中でも最も過酷なことで有名ですね。
また前線では、基地や航空機を守るために、地上戦闘も求められる場合もありました。
そんな何でもありで過酷な列線整備員のために、アメリカ空軍は、特殊な被服を開発・支給しましたよ。
それが今回のモデルです。
列線を英語で「ライン」と言います。
今回のモデルは、列線…つまりラインで使用するジャケットになります。
さてさて、それはどんなジャケットなのでしょうか?
今回は、アメリア空軍セージグリーン装備マニアのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 アメリカ空軍ラインジャケットの全体及び細部写真
前面
襟の形が可愛いですね。
(女性用みたいです。)
マニアからは「ヘチマ襟」と呼ばれていますよ。
背面
着丈の長いコートタイプです。
かなり使い込まれていますね。
前面裏側
やはり内ポケットはありません。
背面裏側
全面にライニング(内張)があります。
前合わせはボタンのみです。
タグ
ブラック地にゴールドの文字は、1950年代〜1960年代前半のタグになります。
(後に、ホワイト地にブラック文字に変更されました。)
タグの上には、ループとライナー装着用のボタン
ウエストのドローコード
襟裏にもドローコードがあります。
襟裏にジッパーもありますね。
その中から出ているようです。
胸ポケット
ダットファスナーで開閉
腰ポケット
こちらもボタンで開閉
袖口
マチ付きでボタンで開閉
今回のモデルは、使用によって袖口が擦り切れています。
ここも欠点でした。
襟裏のジッパーを開けると、中にフードが
襟のドローコードは、フード用でした。
とてもしっかりしたフードです。
袖はラグランスリーブなので、裁断が独特ですね。
ウエストのドローコード格納場所は、とてもタイトです。
各ドローコード付け根は、ブラックの革で補強されています。
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3 その特徴とは?
生地はコットンサテンで、色調は当時のアメリカ空軍シンボルカラーのひとつであるセージグリーンです。
セージという香辛料の色ですね。
(後のモデル(4883C)では、オリーブグリーンに変更されました。)
デザインは、典型的な4ポケットのコートタイプですが、袖はラグランスリーブになっています。
襟の形独特で、他の被服との識別は容易ですよ。
襟の中には、同じコットンサテン製のフードが内蔵されています。
突然の雨や強い風には重宝しますね。
因みに、このセージグリーンは航空自衛隊の二つ前の作業服でも採用されていました。
(つまり、アメリカ空軍の真似でした。)
本来は、専用のウールパイルのライナーも付属しています。
(見つけ次第分析します!)
そのため、ライナー取付用のボタンが内側に取り付けられていますね。
4 製造とサイズのデータ
・製造又は契約年度 1950年代
・製造場所 アメリカ
・契約会社 アメリカ
・製造会社 〃
・材 質 コットン
ナイロン
・表記サイズ M–R
(日本人のL)
・各部のサイズ(平置)
着丈 約77センチ
肩幅 約50センチ
身幅 約62センチ
袖丈 約61センチ
・状 態 中古並品
・官民区分 官給品
・入手場所 岐阜の専門店
・入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
実際にこのジャケットを着用してみると、ある程度の保温力があって、春、秋は十分使えました。
おそらく、ライナーを装着して下に着込めば、冬も使えそうです。
ただしセージグリーンの衣料はコーディネートが難しいのと、汚れがとても目立ちますね。
また、褪色が著しく、すぐに白っぽくなってくるのも困ったものです。
この問題は、アメリカ空軍も把握していて、後に生地の色調をOGに変更したモデルが造られました。
でも根本的な解決にはならなかったようです。
結局、わざわざアメリカ空軍が列線整備員のために造ったジャケットでしたが、1960年代半ばに廃止されました。
じつは、さらに性能の良いジャケットが陸軍で開発され、空軍もそれを採用したからです。
(それがM65フィールドジャケットです。…なるほど、それは敵わないですよね!)
さて、今回のモデルは、 おそらくマニア以外に需要はなさそうです。
しかし絶対数は少ないので、今後の事を考えて購入しておくのも良いかもしれませんね。
その場合は、今回のようにセージグリーン生地のブラックタグのモデルで、程度の良いものがおすすめです。
併せてライナーも入手しておけば、なお良いでしょう。
どうしても新品(未使用品)が欲しい方は、アメリカ製のモデル品が販売されています。
実用にはそちらがおすすめですよ!
今回は、アメリカ空軍の列線整備員用ジャケットを分析しました。
次回は、ドイツ軍の迷彩服を分析します。
お楽しみに!
(20210903更新)
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参考:アメリカ空軍のセージグリーン系生地の装備品はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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