今回は、1980年代のイギリス陸軍迷彩スモックを分析します。
実戦に参加する部隊の兵士用ではなく「CADET FORCE(士官候補生部隊)」用ですね。
既に廃止された「DPM」シリーズの中では、異色なデザインが特徴です。
実際に士官候補生が使用していたものですが程度は良好ですよ!
目次
スポンサーリンク
スポンサーリンク
1 イギリス陸軍士官候補生部隊用迷彩スモック(DPM)とは?
あなたはご存知でしょうか?
第一次大戦で敗れたドイツは、戦後のベルサイユ条約で戦勝国から多額の賠償金と多くの軍事的制限がかけられました。
その目的は、ドイツが「二度と戦争を起こさないようにする。」でした
軍事的には戦車、艦艇及び各種軍用機の開発及び所有の禁止や制限。
そして最も深刻だったのは、国軍の人員(兵士)数を10万名に制限されたことでした。
例えば現在自衛隊の人員は、約22万人。
その約半分で陸海空を守るというのは、不可能に近いでしょう。
(当時の戦勝国は、ドイツがよほど怖かったのですね。)
でも、そんなベルサイユ条約の「10万名制限」に猛反対したのが、かのチャーチルでした。
曰く「10万人の兵士は、10万人の指揮官を意味する!」と。
…つまりその少ない兵士に対し、ドイツはありとあらゆる方法でその全てに指揮官クラスの能力を付与し、次に戦う場合にはその10万人が中核となってさらに強大で強力国になるそ!…と警戒したのです。
第二次大戦初頭におけるドイツ軍の快進撃は、チャーチルの危惧をそのまま具現化した状態になっていたのは記憶に新しいところですね。
この例を挙げるまでもなく、それ以前からも有能な指揮官を多数養成することは、各国軍の最重要な課題の一つとなっています。
勿論、イギリス軍も。
今回のモデルは、イギリス陸軍が士官となるべき候補生の訓練等に使用するために準備した専用の迷彩スモックになります。
実戦部隊が使用するスモックとは大きく違うデザインが特徴ですよ。
さてさて、それはどんな迷彩スモックなのでしょうか?
今回は、イギリス軍装備マニアのみならず、DPMファンのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
背面
前面裏側
ライニングは上半身のみのハーフラインです。
背面裏側
襟周りレイアウト
ラグランスリーブですがエポレットあり。
(南アフリカ警察の迷彩スモックみたいですね。)
襟はジッパーを頂部まで上げ立てることができます。
前合わせはジッパーとマジックテープです。
ジッパーは「OPTI」のブラス製
内ポケット
左右にあります。
一見6つのコンパートメントに分かれているように見えますが…
実は中央のみ使用可能で、二段目はただのプリーツでした。
オープンタイプ。
タグ
ウエストのドローコード
一般的なスモック同様、三本のドローコードを左右で結び調整します。
袖のライニングは途中まで。
やはりハーフラインですね。
エポレット
僅かにテーパーのついたラウンド型。
ボタンで開閉。
腰ポケット
ボタンで開閉。
ポケット口の折り返しはありません。
官給品のボタン
ダークグリーンのプラスティック製。
マジックテープは一部のみ。
袖
テーパー付き。
袖口はマジックテープで調整・開閉
襟裏には一般的なスモック用フードを取り付けるボタンあり。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
3 その特徴とは?
迷彩は1970年代後半のいわゆる「P65」系DPMで、全体的に色調が明るいのが特徴です。
配色は、ホワイトの生地に、ダークイエロー、ブラウン、グリーン、ブラックを用いて、刷毛で小さく丸く塗ったようなパターンをプリントしてあります。
生地はコットンサテンなのですが、アメリカ軍物に比べてやや柔らかい織り方ですね。
デザインは、一般的な迷彩スモックとは大きく違っています。
構成は、ラグランスリーブ、エポレット付き、腰ポケット×2、内ポケット×2で、前見頃と袖口にはマジックテープを使用。
面白いのは内ポケットで、一見多数あるように見えますが、左右一個ずつしかありません。
このデザインの意図がよく分かりませんね。
全体的な縫製は、とても丁寧かつ正確でイギリス軍らしい仕立てです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1980年代
製造場所 イギリス
契約会社 イギリス
製造会社 〃
材 質 コットン
表記サイズ 180/100
(日本人のL〜XL)
各部のサイズ(平置)
肩幅 約42cm
着丈 約80cm
身幅 約57cm
袖丈 約68cm
状 態 中古極上品
官民区分 官給品
入手場所 東京の専門店
入手難易度 3(困難)
スポンサーリンク
【中古】MILITARY◆イギリス軍/CADET SMOCK/ボタン欠品/60s-70s/ミリタリージャケット/S/コットン/KHK【メンズウェア】
スポンサーリンク
5 まとめ
なかなか興味深いスモックですね。
デザインについては、エポレットや胸ポケットの有無はともかく、昔からアメリカやフランスの労働者が着用しているワークジャケットに似ていますね。
アメリカの一般的なワークジャケット
戦闘用迷彩スモックのような物々しさはなく、それでいてポケットは充実しているので普段の使用でも問題はなさそうですよ。
逆に手軽に羽織れるスモックともいえますね。
問題は入手方法です。
これまでいくつか士官候補生部隊用迷彩スモックを見てきましたが、あまり古いモデルや最新のMTPモデルは見当たりませんでした。
いずれも1970年代〜1980年代ものが主体で、しかも数が少ないですね。
もしかしたら試験的な採用で終わってしまったのでしょうか?
士官候補生は、一般部隊に比べて人員は少ないはずですが、目にする頻度としては空軍DPMエアクルージャケット並みとなっています。
それでも今回のモデルと同時期の製品は、大手通販サイトやオークションでも時々見かけることがあります。
(すぐに売れちゃいますが…。)
面白いのは古着屋さんで、「正体不明」、「カスタム品」あるいは「女性用」という名目で販売されている場合がありますね。
探しているあなたは、胸ポケットの有無に注意して探してみましょう!
私は、存在は不明ですが士官候補生部隊用の迷彩トラウザーズを探してみたいと思います。
今回は、珍しいイギリス陸軍の士官候補生部隊(CADET FORCE)用の迷彩スモックを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
(20241130更新)
スポンサーリンク
スポンサーリンク
参考:各国の士官候補生が着用する衣類に関する記事はこちらです。⬇︎
他のイギリス軍装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の迷彩服に関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
スポンサーリンク
【中古】MILITARY◆イギリス軍/CADET SMOCK/ボタン欠品/60s-70s/ミリタリージャケット/S/コットン/KHK【メンズウェア】
【中古】60s~70s/イギリス軍/Cadet Force Smock Jacket/カデットスモック/2/コットン【メンズウェア】
アメリカ空軍 士官学校(USAFA)カデットメルトンウールパーカー コート JP058YN ブラック M 【 レプリカ 】
スポンサーリンク