今回は、1970年代のアメリカ軍パイロットスーツを分析します。
現用の難燃繊維で製造されたスーツの一つ前の型式になります。
でも、今回のモデルは不思議(?)なモデルですよ。
中古品ですが、程度は極上です!
目次
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1 アメリカ空軍パイロットスーツK-2B(インディアンオレンジ)とは?
1903年にライト兄弟が「ライトフライヤー」で初飛行して以降、2つの大戦を経て軍用機はめざましい発達を遂げました。
1940年代には、ジェット機の開発と音速突破
1960年代には、音の3倍の速度で飛行する戦闘機が出現
現代では、目視できるのにレーダーモニターに映らない航空機など、加速度的に発達していますね。
次の宇宙を主舞台とした制宙権争いに発展するまでは、地球上での制空権獲得(航空優勢)のためにまだまだ発達しそうですね。
そんな軍用機の発達に伴い、パイロットの衣料も進化してきました。
航空機の黎明期には、動物の皮革を用いた衣料が多く作られましたよ。
(防風素材は皮革しかなかったから仕方ないですね。)
しかし次第に人工素材に置き換えられ、現在では難燃性(燃え上がりにくい性質)の素材を採用するに至っています。
デザイン的にも進歩して、狭いコクピットでも「より使いやすく」を追求した装備が開発されてきていますよ。
その先駆者がライト兄弟を生んだアメリカでした。
特に1947年のアメリカ空軍独立(陸軍航空隊から独立)以降の装備は、先進的かつ画期的で、後に多くの国が模倣したり参考にされていますね。
今回のモデルは、そんなアメリカ空軍が、1950年代に開発し、1970年代まで使用したパイロットスーツです。
主に、アメリカ本土防空隊のパイロットが使用したモデル…と思ったのですが、どうやらちょっと違うようです。
…なんか、おかしなところがありました!
さてさて、それはどんなパイロットスーツなのでしょうか?
今回は、アメリカ空軍装備マニアのみならず、パイロット装備コレクターのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
全体前面
鮮やかなオレンジ色です。
「インディアンオレンジ」と呼ばれています。
どこがインディアンなのでしょうね?
前面上半身
襟は先端がラウンドです。
K–2Bから採用されているようです。
前面下半身
全体背面
臀部にポケットはありません。
背面上半身
背面下半身
前面上半身裏側
前面下半身裏側
背面上半身裏側
背面下半身裏側
タグ
これだけでした。
他のタグを取り外した痕跡なしです。
ダットファスナー裏側の刻印
アメリカのメーカーですね。
胸ポケット
ジッパーで開閉
腰のジッパー付きスリットとウエスト調整タブ
(ポケットではありません)
右膝ポケット
地面に水平にジッパーで開閉
右足し首ポケットと裾ジッパー
左太腿のナイフポケットと膝ポケット
膝ポケットは、垂直にジッパーで開閉
エンジンオイルの染みが。(強力洗剤でも落ちませんでした。)
左足首ポケットと裾ジッパー
ジッパーは全てスコービル社製「GRIPPER」ブラスジッパー。
ウエスト調整タブはダットファスナーで三段階に調整可能
袖と袖ポケット(シガレットポケット)
立体裁断で、やや曲がった形で縫製されています。
袖口には調整タブ(ダットファスナーで開閉)
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3 その特徴とは?
生地は薄いギャバジンにも似たもので、細い糸で緻密に織られています。
肌触りや質感は最高ですね。
カラーは、通称インディアンオレンジと呼ばれています。
別名レスキューオレンジともいい、パイロットがベイルアウト(緊急脱出)した際、山岳地でも洋上でも目立つように配慮されています。
デザインは、1950年代に開発されたウールのパイロットスーツを改良し、より使いやすく、メインテナンスも容易な材質に変更されていますよ。
この種のスーツでは常識の、コクピットでシートに座ったまま全てのポケットが使えるような配置になっています。
面白いのは、左膝ポケットのみ垂直に開くようになっているところですね。
(ジッパーは、あまり開けやすいようには思えませんが。)
襟は先端が丸く加工されています。
これは、超音速でベイルアウト(緊急脱出)したときに、気流による襟の振動で、パイロットを傷つけないようにとの配慮からきています。
(いつも書きますが、ここがデザインの賛否両論な箇所です。)
マジックテープで留める箇所はどこにもありません。
全体的な縫製は、アメリカ軍装備としては丁寧かつ正確です。
(やはりコマーシャルモデルでしょうか?)
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1970年代
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 コットン
表記サイズ M–R
(日本人のL〜XL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約147cm
肩幅 約46cm
身幅 約58cm
袖丈 約60cm
ウエスト 約47cm
股下 約68cm
裾幅 約18cm
状 態 中古上品
官民区分 民生品(?)
入手場所 ヤフオク
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
通常、アメリカ軍官給品のスーツでは背中上部裏側にタグがあって、ストックナンバー(物品番号)等が記載されています。
でも今回のモデルには、それがありませんでした。
隈なく探したのですが、タグを取り外した痕跡もなかったです。
ところでこのモデルは、1970年代末には官給品を外れて用途廃止になっていますね。
でも製造会社が製造ラインをそのままにして製造、民間パイロット用として販売されていたものかもしれません。
…というのも、左脚にはレシプロ機のエンジンオイルと思われるシミが付いていました。
おそらく、エキゾーストパイプ(排気管)から飛散したのでしょう。
でも、アメリカ空軍のオレンジK-2Bで、これほど程度の良いスーツは初めてだったので購入してみました。
今回のスーツについても、引き続き調査したいですね。
このK-2B全世界で人気となり、いわゆる「西側」の各国空軍が挙って採用しました。
勿論、日本やドイツでもコピーされましたよ。
それどころか「東側」の諸国も、このモデルのコンセプトを基にパイロットスーツを作っていますね。
本当の傑作だったんですね。
さて、実際にこのスーツを着用してみると、通気性が抜群で吸水性もあり、夏のツーリングに重宝しました。
ただ、胸や膝、足首のポケットは、重量物を入れると、急に不快になるので要注意です。
また、各種プロテクターはありませんので、バイカーの皆さんはそれなりの装備追加が必要ですよ。
書き忘れましたが、生地は目が細かいので、おそらくヤブ蚊などは寄せつけないと思います。
狩猟で使用する場合は、足首や手首を太い輪ゴムで締めて、虫などが入ってこないようにすると良いかもしれません。
野山ではめちゃ目立ちますので、誤射による被害も軽減できそうですよ。
(トイレが少々不便ですね。)
今回は、コマーシャルモデルと思われるアメリカ空軍パイロットスーツK-2Bを分析しました。
いやー軍装品って、本当に奥が深いですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20241015更新)
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参考:各国のパイロットスーツに関する記事はこちらです。⬇︎
各国のフライトジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
他のアメリカ軍装備に関する記事はこちらです。⬇︎
フライトジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の単色衣類に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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