今回は、1950年代のアメリカ軍パイロットスーツを分析します。
有名なスーツですね。
でも、実はあまり素性がよくわかっていないスーツです。
中古品で経年変化もありますが、程度は良好ですよ!
目次
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1 アメリカ空軍防寒パイロットスーツMD-3A(25490-A)とは?
東京台東区御徒町のアメ横に、ミリタリーマニアなら誰でも知っている有名なミリタリーショップがあります。
かなり古くから営業していて、商品の在庫もさることながら、各国の軍装品(それも官給品!)を多数保有していることでも有名ですね。
つい先日ですが、そのショップの約50年前のカタログを入手しました。
その、もの凄い内容(在庫品)に、思わずタイムマシンが欲しくなりましたね。
(お宝の山でした。詳しくは、伝説のミリタリー雑誌「PXマガジン』を参照願います。)
そういえばその昔、全てアメリカ軍の払下げ品で装備を整えた強者登山者が、北アルプスなんかに出没していましたね。
先輩も、このショップを利用されたのでしょうか?
そのカタログの中で、今ではあまり見かけないパイロットスーツが載っていました。
よく出回っているCWU–1Pではなく、独特のデザインに変な魅力を感じましたよ。
はたして偶然ヤフオクで、同じスーツを見つけて、首尾よく落札することができました。
それが、今回のパイロットスーツです。
さてさて、それはどんなパイロットスーツなのでしょうか?
今回は、アメリカ空軍パイロット装備マニアのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
全体前面
ポケットは前面のみに集中していますね。
前面上半身
前面下半身
全体背面
背面上半身
背面下半身
上半身前面裏側
下半身前面裏側
上半身背面裏側
下半身背面裏側
タグ
NSNではなく、FSNの時代です。
黒タグ黄文字は、ビンテージの証ですね。
襟
短く、スタンドカラーです。
胸ポケット
ジッパーで開閉
ウエストの調整タブ
金属製バックル
腰ジッパー付きスリットと腰ポケット
腰ポケットは ダットファスナーで開閉
膝ポケット
こちらはジッパーで開閉
足首ポケットと、ジッパー
ポケットはジッパーで開閉
裾には、ソ連軍系装備のようにループが準備されています。
金属製バックルで調整
前身頃のジッパーはウエストまで開放できます。
そこから下は、股間を全開できる別のジッパーが、臀部まであります。
2種類のジッパーというのは、珍しいレイアウトですね。
ジッパーは「CONNMAR」です。
上下ジッパーの間は微妙に開いていて、風を止めるフラップが内側にあります。
表側
裏側
左脇腹に穴が開いていて、筒状のニットが縫い付けられています。
何かパイプ状の物を挿入するようです。
航空機からの暖気を導入するのでしょうか?
使用しない時のために、裏側にはフラップがあって風の侵入を防止します。
左袖のペンポケット
袖
袖口は、ダットファスナーで調整
何故かウエスト部は、シェルのカラーが違っていました。
どういう意味でしょうか?
裾のループ用バックル
裾の裏側は、別の生地で補強されていました。
ウエスト裏側
ウエスト部には何本もタックが入っていますよ。
股間の裏側はフラップでカバーされています。
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3 その特徴とは?
まずシェルですが、初期のL–2BやMA–1のように、シルバーグレイのナイロン製です。
(初期のMA–1などと同じ生地ですね。)
でも、L–2Bのテストサンプルみたいな特殊な織り方がされていますよ。
デザインは、胸、腰、膝、足首にそれぞれ2個ずつのポケットがあります。
また、左右の腰には、ジッパー付きのスリットがあります。
特筆すべきはメインジッパーで、前身頃はウエストまで。その下は股間から臀部の後ろまで開くジッパーという二本立てです。
便利なのか不便なのか、よくわからないですね。
(ただトイレは難しそうです。)
また、左脇腹には穴が開いていて、ニットの筒が縫い付けられていますね。
用途は不明ですが、スーツの暖房と何か関係があるのではないでしょうか?
アメリカ軍の多くのフライトジャケットや、パイロットスーツに見られる左袖のシガレットポケットはありません。
全体として、試行錯誤しているイメージがあるパイロットスーツです。
当時すでに支給されていたと思われる他のパイロットスーツと全く違うコンセプトで造られていますね。
(面白いパイロットスーツです。)
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1950年代
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 ナイロン
ウール
表記サイズ M–R
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約162cm
肩幅 約47cm
身幅 約58cm
袖丈 約64cm
ウエスト 約50cm
股下 約74cm
裾幅 約14cm
状 態 中古極上品
官民区分 官給品
入手場所 兵庫県の専門店
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
タグから判断すると、後のCWU-1P同様、インターミディエイトゾーン用のパイロットスーツだと判断できます。
しかし、このデザインのスーツは、現行のモデルでは皆無ですね。
また、空軍と明示してあるので1947年以降のモデルであり、かつシェルがシルバーグレイであることから、概ね朝鮮戦争後の装備品であるようです。
ワールドフォトプレス発行「飛行服発達史」の中にも出ていませんでした。
(途絶えてしまった系譜のモデルでしょうか?)
今後も調査を続けてみますね。
さて、今回のモデルを実際に着用して、軽くバイクでツーリングしてきました。
予想通り、前身頃のジッパーとジッパーの間、左脇腹のホールから風がバンバン入ってきましたよ!
(時速60km以上では致命的です。お腹がだんだん冷えてきました!)
寒候期は、丈の長いジャケットを上に着たり、インナーなどの工夫が必要不可欠なようです。
また、胸、膝、足首のポケットはとても使いづらく感じました。
(バイクだからかもしれません。航空機と同じようなポジションの四輪なら使い易いのでしょうか?)
また股間のジッパーは、用を足すことにあまり向いていないデザインのようですよ。
(ここはCWU-1Pが優れているようです。)
次回は暖候期に試してみたいですね。(初夏を目処に…。)
購入に関しては、数も少なく、カラーも一般受けしなさそうなので、敢えて購入するべき物ではないようです。
しかしアメリカ空軍マニアは、必須アイテムなのは間違いありませんね。
やはり、程度の良い物を探しましょう!
今回は、アメリカ軍の謎のパイロットスーツMD-3Aを分析しました。
いやー軍装品って、本当に面白いですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20240303更新)
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参考:各国軍のパイロットスーツに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍のフライトジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の防寒装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の単色衣類に関する記事はこちらです。⬇︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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