今回は、1980年代のスイス陸軍戦車兵用カバーオール(つなぎ)を分析します。
以前スイス陸軍戦車兵用カバーオール(TAZ90)という新しい迷彩生地のモデルを分析しました。
今回は、その一つ前の迷彩生地を使用したモデルになります。
今回のアイテムもデッドストックですよ!
目次
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1 スイス陸軍迷彩戦車兵用カバーオール(ライバーマスタータイプ)とは?
第二次大戦末期にドイツ軍が開発したライバーマスター迷彩は、来たる赤外線暗視装置による戦闘を考慮した先進的な迷彩でした。
一説によると、その構成色である「赤」と「黒」は赤外線反射に有効なカラーらしいですね。
この独特の迷彩については、ヨーロッパの戦いが終了した後の1945年7月に、ドイツ軍迷彩服の調査を行なっていたリチャードソン中尉が上級部隊に対して報告しています。
リチャードソン報告の一部
「ライバーマスター迷彩」のテント用生地です。
グリーンやダークレッドのギザギザ(?)が特徴ですね。
ホビージャパン発行「GERMAN CAMOFLAGE UNIFORMS 1937▶︎1945 第二次大戦ドイツ迷彩服」より引用
「迷彩王国」ドイツ軍の最後を飾る優秀な迷彩だったようです。
そして戦後、この迷彩の有効性に気付いたベルギーがテストしたり、旧チェコスロバキアが参考にした迷彩服(陸軍迷彩リバーシブルスナイパースモック)を開発しましたね。
でも本格的に採用したのはスイス軍のみでした。
(面白いことにリチャードソン報告を受けた当のアメリカ軍は、その後研究を重ねERDL迷彩を開発、ベトナム戦争でその成果を発揮することになります。)
ただしそっくりそのまま採用するのではなく、スイス軍独自の僅かな改良を加えていますよ。
今回のモデルは、そのライバーマスター系迷彩生地で製造された戦車兵用の衣類になります。
今回のモデルも、定番と呼ばれる戦車兵独特の装備を備えられていますね。
さてさて、それはどんなカバーオールなのでしょうか?
今回はスイス軍マニアのみならず、ファッションの素材を探しているあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
全体前面
前面上半身
前面下半身
全体背面
背面徐半身
背面下半身
前面上半身裏側
前面下半身裏側
背面上半身裏側
中心付近に見える2本のテープはレスキューハーネスです。
背面下半身裏側
前身頃はジッパーのみ。
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1985年度契約です。
襟はジッパーで立てることができます。
胸ポケット
胸には左右に用途不明のフックが。
腰のスリットとスラッシュポケット
ジッパーとダットファスナーで開閉
膝ポケット
裾はジッパーとマジックテープで開閉
前身頃のメインジッパーは何故か「YKK」製
左袖ポケット
袖は先端にゴムを内蔵
ジッパーで開閉できます。
背中のジッパーを開けると、例によってレスキューハンドルが取り出せます。
左胸には、用途不明のループが。
ダットファスナーで開閉
ウエストはボタンホールの開いたゴムテープでサイズを調整することができます。
レスキューハーネスの末端は、太腿内側で縫い付けられています。
アメリカ軍のように太腿一周はしていないですね。
裏側からみたレスキューハンドル
ジッパーのサイズでしょうか?
他のジッパーは「riri」製
ダットファスナー裏側の刻印
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3 その特徴とは?
迷彩は、ライトブラウン、グリーン、ダークレッド、レッドブラウン、チャコールグレイで葉や雲型を描き、所々にホワイトとダックエッググリーンで小さな斑点を散りばめています。
この白っぽい斑点が、スイス軍オリジナルで一大特徴ですね。
(ドイツ軍のライバーマスターにはプリントのずれはありましたが、斑点はありませんでした。)
生地はコットンとポリエステルの混紡で、一般的なツイルです。
薄くて軽量、肌触りも良いですよ。
残念ながら他国のように、難燃性は付加されていないようです。
デザインは、アメリカ軍の標準的なパイロットスーツを参考にしているようですね。
構成は、エポレットなし、胸ポケット×2、腰スラッシュポケット×2、膝ポケット×2で背面には一切ポケット類がありません。
面白いのは、胸に用途不明のフック×2、ループがあるところです。
何に使うのでしょうね。
(知っている方がいらしたら教えてください。)
勿論、他国の戦車兵用カバーオールと同じく、レスキューハーネスを装備していますよ。
これは近代戦車兵衣料の定番ですね。
全体的な縫製は丁寧で、スイスらしいカチッとした仕立てで好感が持てます
4 製造とサイズのデータです!
・製造又は契約年度 1985年
・製造場所 スイス
・契約会社 スイス
・製造会社 〃
・材 質 コットン
ポリエステル
・表記サイズ 50–76
(日本人のL)
・各部のサイズ(平置)
着丈 約160センチ
肩幅 約50センチ
身幅 約63センチ
袖丈 約62センチ
ウエスト 約54センチ
股下 約75センチ
裾幅 約19センチ
・状 態 デッドストック
・官民区分 官給品
・入手場所 沖縄の専門店
・入手難易度 1(容易)
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5 まとめ
今回のモデルではありませんが、実際にライバーマスター型迷彩服を着用して演習を行なっているスイス軍の写真があります。
この写真を見る限り、草原ではむしろ目立っていますね。
演習中のスイス軍
(J.F.Borsarello著「CAMOUFLAGE UNIFORMS of European and NATO Armies 1945 to the Present」より引用)
後に迷彩の色調が変更されたのは、こんなところに原因があるのかもしれません。
ところで第二次大戦中にドイツ軍が想定した赤外線を用いた戦闘ですが、各国とも研究によって衣類の材質、染料、織り方を変えることによって、一般的な色調でも対赤外線対策を施すことができるようになりました。
そのためライバーマスターのようにレッドを多く使用した迷彩を採用されることは殆どありませんでしたね。
さて、今回のモデルも含めて、このライバーマスター型迷彩服(デッドストック、中古各種)は、まだまだ販売されていますね。
(でも年々減ってきてはいますが…。)
しかも大手通販サイトで取り扱われていますよ!
これから集める方も、今なら入手できそうですね。
用途としては、サバイバルゲーム、狩猟、野鳥観測、作業などが考えられますが、独特のカラーリングを利用してファッションに使用してみるのはいかがでしょうか?
コーディネートは難しいかもしれませんが、個性を発揮できると思いますよ!
上述の通り難燃繊維製ではないので、キャンプなどの火を使う場面では、十分注意してください。
今回は、古いドイツの迷彩を原型としたスイスの戦車兵用カバーオールを分析しました。
いやー軍装品って、本当に面白いですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20220928更新)
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参考:他のスイス軍装備はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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