今回は、1950年代のアメリカ軍M51シェルパーカー(後期型)を分析します。
以前、生地がコットンサテンモデルを分析しました。
今回は、青島パーカーで有名になった軽量生地のモデルですね。
シェル、ライナーともデッドストックですよ!
目次
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1 アメリカ軍M51シェルパーカー(後期型・ライナー付)とは?
極寒の地、朝鮮半島をめぐる朝鮮戦争でアメリカ軍が経験したのは、それまで経験したことのない寒気でした。
第二次大戦ではヨーロッパに展開、M43シリーズのレイヤード(重ね着)システムを採用した優秀な防寒装備を開発したアメリカ軍でしたが、驚くことにそのほとんどが能力不足だったようですね。
そのため、1951年には全く新しい装備が開発されましたよ。
それが一連のM51シリーズですね。
今回のモデルは、その中でも最も外側に着用するパーカーになります。
衣類の外殻…とも言えることから「シェルパーカー」と呼ばれていますね。
当初、コットンサテン生地のモデルでしたが、重ね着時や水濡れ時の軽量化を目的に「オックスフォード」と呼ばれる薄く軽量な生地に変更された、いわゆる後期型になります。
防風性能を大きく低下させず、より軽量化に成功した後期型は、兵士のみならず戦後のファッションにも多用されましたね。
(モッズが有名でした。😠)
さてさて、それはどんなM51シェルパーカーなのでしょうか?
(今回はおまけで海兵隊用のライナーを装着させてみました!)
今回は、アメリカ軍装備マニアのみならず、映画「MASH」やドラマ「踊る大捜査線」ファンのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
背面
前面裏側(ライナー付)
背面裏側(ライナー付)
ライナーは、残念ながら製造の過程で生地が変色していますが、デッドストックです。
(ライナーのサイズ感に注意!)
前面裏側(ライナーなし)
背面裏側(ライナーなし)
よく見ると、各パーツで色調が違っていますね。
アメリカ軍物あるあるです。
(でも外側の色調は揃っていますね。これがアメリカ?)
フード周りレイアウト
前合わせはジッパーとダットファスナーです。
フードのスタンプ①
フードのスタンプ②
1953年度契約品です。
ライナーのタグ
エポレット
テーパーなしのクサビ型
袖
かなりのテーパー付きに見えますが、袖口のタブを使用しているからですね。
本来はストレートです。
袖口はタブとボタンで締められます。
タブの付け根メッシュ部分がゴム内蔵繊維
(製造後70年近くなりますが、まだテンションがあります!)
ウエストのドローコード
シェルの表面に出てきていますね。
出口には金属製のハトメ付き。
腰ポケット
ダットファスナーで開閉
ポケット口には、ちゃんと折り込みがありますね。
ポケット内側の生地は、カーキの毛布生地
フード
前縁や頂部にボタンホールあり。
これはオプションのハードフード取付用。
スワローテイル
実は用途がよくわかりません。
ダットファスナーで裾を上げることができるのですが…。
ライナーのサイズ感
途中までしかありません。
袖も先端まではカバーしていませんね。
ドローコードガイドの状況
エポレット及びライナー用ボタン
OG–107などのユーティリティージャケットと同じボタン。
フード前縁の泥コードロック
昨日製造されたような未使用です。
袖口のボタン
肉厚で独特の形状
(モデル品はこのボタンが再現されていない場合がおいですね。)
ジッパー
刻印は「CONMAR」
ピカピカです!
ライナー
前面裏側
通常は、この白い側が外側を向くように着用します。
背面裏側
ウールパイル生地の様子
一般的な日本の「タオル」みたいな感じですね。
脇には菱形の生地が。
コットンポプリンで通気性を確保
肘の生地
こちらもコットンぽプリン製
肘を曲げやすくする工夫ですね。
袖のタブ
ライナーをシェルに取り付けるためのもの。
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3 その特徴とは?
シェルはオリーブグリーンのコットンとナイロンの混紡で、薄く軽量です。
でもしっかり風を防ぎますよ!
色調は、後のM65シェルパーカーより、ややODに近いですね。
デザインは、フード、エポレット付き、腰ポケット×2で、着丈の長いコートタイプです。
フードには専用のハードフードが取り付けられるように、ボタンホールが設けられていますよ。
内側にはライナー取り付け用のボタンが多数あります。
(シェルパーカー側にボタンがあるのが、フランス軍M64パーカーなどと大きく違っていますね。)
面白いのは腰ポケットで、内側が毛布生地になっていますよ。
これはハンドウォーマーを兼ねているわけですね。
(人に優しいデザインです。)
全体的な縫製は、やや雑ですが強度は抜群なアメリカ軍スタンダードな仕立てです。
驚いたのは、裏側を見るとシェルのパーツ色が各部位で違っているのに、肝心な外側は同一で、見事に辻褄を合わせているところですね。
アメリカ凄いです!
今回はおまけで、アメリカ海兵隊用のライナーを準備しました。
多くのM51ライナー同様、ウールパイル地で重量はありますが、とても暖かいのが特徴です。
4 製造とサイズのデータ
・製造又は契約年度 1951年
・製造場所 アメリカ
・契約会社 アメリカ
・製造会社 〃
・材 質 コットン
ナイロン
ウール
・表記サイズ M
(日本人のXXL)
・各部のサイズ(平置)
着丈 約107センチ
肩幅 約55センチ
身幅 約73センチ
袖丈 約63センチ
・状 態 デッドストック
・官民区分 官給品
・入手場所 大阪の専門店
・入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
シェルの生地をコットンサテンからオックスフォードに変更したのは、正解かもしれませんね。
軽量化にともない、取り扱いやすさがずいぶん向上しています。
これは前線の兵士にも好評だったのでは?
(ただしミリタリーオールドマニアとしては、やはりコットンサテンモデルの落ち着いた感じが捨てきれませんが…。)
いつの時代でも、戦場では装備の軽量化が大きな課題ですから、ちゃんと改善されているのは良いことですね。
この軽快さからでしょうか?
日本でも「踊る大捜査線」以降、ファッションの定番化されつつあるようです。
それも、スーツやセーターと合わせて、アウターに使用されることが多いようですね。
その場合に問題になってくるのは、サイズ感です。
M51シェルパーカーは、通常の防寒戦闘装備の上に着用する衣類ですので、表記サイズよりも2〜3サイズ分大きく造ってあります。
そのため、アウターで着用する場合、たとえばM65フィールドジャケットなどでMサイズがベストなら、M51ならXSがベストサイズになります。
システムでコレクションするヒストリカルゲームならいざ知らず、ファッションでは着用するシチュエーションによってサイズを考えるのが良いでしょう!
さて今回のモデルですが、さすがにデッドストックの入手はとても難しいです。
でも中古品ならなんとか入手可能ですよ。
(それでも困難が伴いますが…。😅)
中古極上品はほとんど残っておらず、また見つけたとしてもかなりの高額なのが難点です。
それでは…と中古並品を見ると、致命的な破損や修理があって、美品も少ない状況ですね。
もはや現在では、ネットオークションでも、なかなか美品が見当たらない状況です。😓
しかし、安心してください。😃
各種グレードのモデル品が存在していますよ。
中でも、後のM65シェルパーカーを改造して製造されたモデルは、一見モデル品に見えないくらい良くできています。
(ボタン、ジッパー、ライナーが識別点です!)
また、各ファッションブランドでも取り上げられて製品化されていますね。
中には雰囲気はそのままに、サイズを常識的なものに変更しているブランドもあるようですよ。
これなら表記サイズ通りで、安心して着られますね。
勿論、モデル品なら大手通販サイトで、いつでも誰でも購入可能です!
官給品、モデル品を問わず、着用する場合は着丈が長いので裾が汚れることが多いのと、シェルだけでは防寒能力が低いので、インナーに工夫するかライナーを準備しましょう!
今回は、日本でも大人気のアメリカ軍M51シェルパーカー官給品デッドストックを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
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参考:他のアメリカ軍M51装備に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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