今回は、1980年代のアメリカ陸軍CVCカバーオールを分析します。
前回(CVCジャケット)の続編ともいうべきアイテムですね。
原型は空軍のパイロットスーツのようです。
撮影のために開封した、デッドストックですよ!
目次
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1 アメリカ陸軍CVCカバーオール(OD)とは?
世界各国の戦車兵用被服を見ると、圧倒的にカバーオールが多いですね。
元々第二次大戦で、戦車兵用カバーオールを官給品として採用していたのは、旧日本軍、イギリス軍、そして旧ソ連軍でした。
(ドイツでも一部で採用していましたが、あくまで限定使用でしたね。)
一方アメリカ軍は、HBT(ヘリンボーンツイル:杉綾織)のカバーオールはありましたが、純粋な戦車兵専用ではなく、あくまで作業服の一種でした。
(強いて言えば、ウインターコンバットジャケット(通称:タンカースジャケット)と、それと同じ造りのオーバーオールがあって、それが戦車兵用と言えなくもないですが…。 )
大戦後、優秀な戦車を製造し、NATO(北大西洋条約機構)の一員として各国に展開したアメリカは、そこでイギリス連邦国の戦車兵が着用していた、凝ったデザインのカバーオールを目のあたりにします。
やや凝りすぎの感もありましたが、そのカバーオールがとても機能的であったことから、アメリカ軍でもベトナム戦争終了後に戦車兵(戦闘車両)用カバーオールの開発を進められました。
デザインの基礎になったのはイギリス軍系カバーオール…ではなく、アメリカ空軍が採用していたパイロットスーツでした。
(面白いですね。実際にK-2B(セージグリーン)などは戦車兵が使用していたことが確認されています。でも、どうやって入手したのでしょう?)
そうして1970年代末に完成したのが、今回のカバーオールです。
折しも各地域で勃発した戦争の教訓から、戦車兵用装備も難燃性を求められるようになってきたことから、新しく開発したカバーオールも、当然、難燃性能が付加されますよ!
さてさて、それはどんなカバーオールなのでしょうか?
今回は、ミリタリーマニアのみならず、燃えにくい作業服を探しているあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面全体
斜めの胸ポケット、下半身に多いポケット、背面に何もないデザインなど、あきらかにパイロットスーツを参考にしていますね。
前面上半身
襟は、超音速で射出されることがないので、通常の形状です。
(シャープなデザインですね。)
袖口の形状に注意
前面下半身
分かりにくいですが、左右の腰、膝、ふくらはぎにポケットがあります。
背面全体
背面上半身
背面上部には、CVCジャケットと同じようなタブとスリットがあります。
ウエスト部には、生地が二重になったところが!
背面下半身
よく見ると、臀部に縦ジッパーが2本ありますね。
これは…
前面裏側上半身
白いテープ状のものは、レスキュー用のハーネスです。
白い四角の生地は、ライナー用ダットファスナーの力布です。
前面裏側下半身
下半身のポケットは、全てスラント、又はスラッシュポケットなので、ポケット生地が全部内側にありますよ。
背面裏側上半身
レスキューハーネスは、タスキのように両脇を一周して背中上部で交わっています。
背面裏側下半身
襟と胸ポケット
全てのジッパーのプルタブには、生地と同じ材質のタブが縫い付けられています。
ウエスト付近
腰ポケット
膝ポケット、足首のポケット、裾
全てジッパーで開閉
勿論ジッパーは上下から開くダブルジッパーです。
股間の裁断が独特ですね。
裾には内側に丸い補強生地が。
なるほど、ここは靴でよく擦り切れますよね。
左腰にあるレシーバーコード用ループ
左袖のシガレットポケットも採用
袖は立体縫製で、肘に補強生地があります。
袖はジッパーで開閉でき、袖口にはゴムが内蔵されていますよ。
これなら、ボタンの様に引っ掛かりませんね。
ジッパーは全て黒染めの「SCOVILL」です。
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1989年度契約品です。
製造メーカーは、荒い縫製で有名ですね。
ウエストのライナー用ダットファスナー
力布で補強されています。
臀部裏側には2本のジッパーと3個のダットファスナー。
ジッパーの用途は?
上部のマジックテープを外し、両サイドのジッパーを開くと臀部をオープンにできます。
これでトイレも安心ですね。
開く部分にダットファスナーが付いているので、ライナーも同じ仕様のようです。
背中のスリットは…
マジックテープで開閉します。
ここから白いレスキューハーネスを引き出します。
官給品の物品票
こんな感じでビニール袋に入っていました。
(未開封でしたが、撮影のために開封)
CVCジャケットとのコーディネート
(ジャケットはやや日焼けしています。)
こんなふうにしてスリットを開き、ジャケットの上から中のハーネスを取り出す。
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3 その特徴とは?
生地は薄いOD(オリーブドラブ)のアラミドで、ジャケットより目が粗く、通気性がとても良いです。
デザインは、空軍が採用していたK–2Bに似ていますが、パッチポケットはなく、全てスラント&スラッシュポケットになっていますよ。
しかも一部生地が二重になっていることから、より耐火性が増していますね。
また袖口、足首はジッパーで開放でき、それぞれ先端にゴムを内蔵していますよ。
特筆すべきは、白いレスキューハーネスが、まるで襷(たすき)の様に脇を廻っているところですね。
これは、車内で気絶したり負傷した兵士を、狭いハッチ(搭乗口)から救出するためのものです。
人命重視のアメリカ軍らしい装備ですね。
全体的な縫製は少々雑ですが、強度優先のアメリカ軍スタンダードです。
参考:実際の戦車炎上画像(シリア内戦時のソ連製T–72戦車)
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1989年
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 アラミド
(難燃ナイロン)
表記サイズ S–R
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約156cm
肩幅 約43cm
身幅 約54cm
袖丈 約63cm
ウエスト 約45cm
股下 約70cm
着丈 約101cm
裾幅 約12セcm
状 態 デッドストック
官民区分 官給品
入手場所 岐阜の専門店
入手難易度 1(容易)
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5 まとめ
実際に着用してみると、夏は通気性があって快適です。
しかし、アラミド繊維が汗を吸収しないので、大汗をかくと途端に不快になりますね。
素肌に着用するのはおすすめできません。
注意すべきはサイズで、専用のライナー着用を前提に設計されているため、表記サイズよりワンサイズ大きくなっていることです。
また、紫外線による変色もCVCジャケットと同じで注意が必要です。
特徴あるレスキューハーネスは、特に違和感もなく着用できますよ。
(いざと言う時に、効果を発揮してくれるでしょうか?)
このカバーオールは、シックなカラーなので普段でも使用できそうですね。
ライナーを装着して、CVCジャケットを羽織れば、寒候期でも活躍してくれそうです。
袖口や裾が引っかかりにくいのは、各種作業でも助かりますね。
あらゆるシーンに応用の効くカバーオールですよ。
生地の特性からキャンプにも安心して使えますね。
アメリカ本国ではACU/UCP(アメリカ陸軍のデジタル迷彩)モデルも支給されています。
現在日本にもデッドストックが輸入されていることから、ODモデル(砂漠用のタンモデルも)は、用途廃止になったのかもしれませんね。
ところでバブル期は、2万円近くしていましたが、現在は随分安くなっています。
探していた方は、今のうちに入手しておきましょう!
今回は、アメリカ軍の戦闘車両等乗員用カバーオールを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20240129更新)
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参考:アメリカ軍の他のCVC装備に関する記事はこちらです。⬇︎
同じ頃の旧ソ連軍戦車兵用迷彩服に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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