今回は、1980年代のアメリカ軍CVC(コンバット・ビークル・クルー:戦闘車両乗組員)ジャケットを分析します。
以前デザート(砂漠)用を分析しましたが、今回は一般用ですね。
勿論、ヘリクルージャケット…ではないですよ!
今回は、中古品ですが程度は良好です!
目次
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1 アメリカ陸軍CVCジャケットとは?
第二次大戦でアメリカ軍は、画期的な防寒衣料を開発し、一部の部隊に支給しました。
いわゆるウインターコンバットジャケット、通称「タンカース・ジャケット」です。
このジャケットは丈が短く、襟、袖、腰にニットを配したデザインは、現代のMA–1をはじめとするフライトジャケットや、スタジアムジャンパーの原型ではないか?と思われるほど、洗練されたデザインでした。
(しかもライニングが毛布生地で、とても暖かいジャケットでしたよ!)
しかし生産性やクリーニングの問題から、第二次大戦中に廃止されましたね。
戦後の戦車兵は、専用のヘルメットや通信機器などを除き、一般兵科と同じ被服が支給されます。
そんな中、各地で大きな戦争が起きます。
朝鮮戦争、インドシナ戦争、中東戦争そしてベトナム戦争です。
そのうち、直接アメリカ軍が関わった戦争は朝鮮戦争とベトナム戦争ですが、その他の地域における戦闘の情報も続々入ってきました。
なかでもアメリカ軍が注目したのは、撃破された車両の状況でした。
特に旧ソ連製(又は衛星国製)の携帯対戦車ロケット弾や対戦車ミサイルで撃破された戦車は、車内が黒焦げで装備していた弾薬が誘爆を起こし悲惨な状況になっていましたね。
勿論搭乗員の被害も甚大でした。
何しろ戦車内には、各種弾薬や燃料が積まれていて、一旦火がつくと激しい火災に発展するんですね。
シリア内戦時のT–72戦車撃破シーン
(音声注意です。)
早急に対策が必要でしたが、ヒントはパイロット装備にありました。
同じ頃、航空機の火災に悩んでいた海軍、空軍は、1970年代にはすでに難燃繊維製のフライトジャケットを実用化していたからです。
遅ればせながら陸軍も戦車兵などの戦闘車両搭乗員用の難燃被服開発を進めました。
そうして完成したのが、今回のモデルのような一連のアラミド(難燃繊維)製装備です。
今回は、その中でも寒候期用のモデルになります。
さてさて、それはどんなジャケットなのでしょうか?
(何処かで見たジャケットではありますが…。)
今回は、アメリカ軍マニアのみならず、火気に強いジャケットをお探しのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
正面からは、ヘリクルージャケット大きく変わりません。
袖と腰にはニットがあります。
背面
上部にスリットに注意!
前面裏側
背面裏側
キルトでインターライニング(中綿)もアラミド(難燃繊維)です。
前合わせはジッパーのみで、冬季用のためにストームフラップがありますね。
タグ①
1986年度契約品です。
タグ②
ジッパーは「SCOVILL」です。
腰ポケット
マジックテープで開閉
ポケット容量はやや小さいです。
左袖のシガレットポケット
袖ニット
肘に四角い補強生地があります。
背中のスリット
背面表側にタブが付いていて、マジックテープで開閉します。
ヘリクルージャケット(フライヤーズジャケット)との大きな識別点ですね。
このスリットは、ジャケットの下に着用するカバーオールのレスキューハンドルを取り出すためのものです。
CVCカバーオール
襟元に見える白いテープがレスキューハンドル&ハーネスです。
カバーオール背面レスキューハンドル
車内で気絶した兵士をハッチなどから引き上げるためのものです。
CVCカバーオールの上にCVCジャケットを着用した場合
カバーオールとジャケットの背面スリットを開けて、レスキューハンドルを取り出すことができます。
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3 その特徴とは?
シェルは明るい艶消しのオリーブドラブで、とてもシックです。
如何にも地上戦闘用と言ったイメージですね。
この生地は、ヘリクルージャケット(暖候期、寒候期用)、CVCカバーオールなどと共通です。
デザインは、2ポケットで丈の短いジャケットタイプです。
襟は普通ですが、袖、腰にニットがあって、かつてのタンカースジャケットの現代版といった感じですね。
ライニングとインターライニングがあって、着るととても暖かいです。
気のせいでしょうか?アラミドなどの難燃繊維は、通常のナイロンより保温力があるような気がします。
(私見)
背中には、例のスリットがあって、マジックテープで開閉します。
これは、CVCカバーオールにあるレスキュー(救助)ハーネスを引き出すためのスリットでしたね。
ヘリクルージャケットには、これがありません。
全体的な縫製は、少々雑ですが強度は十分です。
アメリカンスタンダードといったところでしょうか?
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1986年
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 アラミド
(難燃ナイロン)
表記サイズ M–R
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約66cm
肩幅 約49cm
身幅 約57cm
袖丈 約61cm
状 態 中古極上品
官民区分 官給品
入手場所 岐阜県の専門店
入手難易度 1(容易)
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5 まとめ
アメリカのミリタリークロージング(軍用衣料品)を集めていると、時々空軍のフライトジャケット(L-2B、MA-1など)を陸軍や海兵隊のタンククルー(戦車兵)が着用していたと思われる個体が発見されます。
大戦中の戦車ならいざ知らず、近年の戦車は冷暖房完備…かと思っていましたが、寒さを感じるタイミングもあるんですね。
でもナイロン装備は、やはり火に弱いのが難点です。
かといって、通常の装備(各種フィールドジャケットなど)は狭い戦車内では煩わしいものでした。
しかし今回のような専用モデルの開発で、またCVC装備の使い勝手が向上したようですね。
素晴らしいです。
ただ、CVCジャケットに関しては、ACU迷彩(アメリカ陸軍のデジタル迷彩)モデルを見たことがありません。
(CVCカバーオールまでは確認できていますが…。)
もしかしたら今回のモデルは廃止された可能性もありますね。
(今後も調査してみます。)
さて、今回のジャケットですが、とても着やすくて暖かいジャケットです。
普段着は言うに及ばず、サバイバルゲーム、狩猟、野鳥観察の防寒着として使ええます。
バイカーにもおすすめですね。(キャンプにも安心!)
ただし、使用には大きな問題点があります。
アメリカ軍ナイロン系難燃繊維の欠点で、紫外線により著しく褪色してしまうのです。
(よーいドン!で次第に茶色に変色していきますよ!)
室内の蛍光灯でも変色していきますので、注意が必要です。
日光に当てないようにして、室内では紫外線を発しない蛍光灯に変えるなどの工夫が必要ですね。
もし、変色させてしまった場合は…諦めて、全体を満遍なく変色させましょう。
また違った雰囲気のジャケットになって渋いですよ!
今回は、アメリカ軍の現代に蘇ったタンカースジャケットと言えるCVCジャケットを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20240117更新)
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参考:砂漠用CVCジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
CVCジャケットとペアで使用するCVCカバーオールに関する記事はこちらです。⬇︎
CVCジャケットと似ていますが、用途の違うヘリクルージャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
他国の同じ戦車兵用装備に関する記事はこちらです。⬇︎
他のアメリカ軍装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の防寒装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の単色衣類に関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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