今回は、1960年代のイギリス陸軍空挺迷彩スモックを分析します。
いわゆるデニソンスモックの戦後型ですね。
残念ながらモデル品ですが、とても良く出来ていますよ。
ただし前オーナーがいらぬ加工を施していました!
中古ですが、着用感少ない極上品ですよ!
目次
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1 イギリス陸軍空挺迷彩スモック(デニソンスモック・戦後型・モデル?)とは?
第二次大戦中に開発されたデニソンスモックですが、戦後も空挺DPMスモックが採用されるまで使用され続けました。
面白い事に、1970年くらいには、デニソンスモックとDPMスモックが同じ部隊で混在している状況もありましたよ。
また、戦後のデニソンスモックは、その迷彩生地が大きく分けて
- 戦時中の残余の迷彩生地を用いたモデル
- 戦後新たに開発された迷彩生地のモデル
の2種類が存在していました。
(何れも迷彩は数パターンあり。)
素人考えでは、大戦中の迷彩生地を再生産して、DPMまでの繋ぎとすれば良いように思いますね。
でも、わざわざ全く違うパターンの迷彩生地を開発・量産するのが、イギリス軍のイギリス軍たる所以なのでしょうね。
今回のモデルは、その戦後型迷彩生地を用いた型のモデル品になります。
理由は不明ですが、元のオーナーがあろうことか、パターンの一部を「加筆(改ざん?)」していました。
何故でしょう?
そこには、闇を感じましたよ。😅
さてさて、それはどんなデニソンスモックなのでしょうか?
今回は、コアなデニソンスモックコレクターのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
殆どがプルオーバーの大戦モデルと違って、最初からフルオープンのジッパーです。
背面
ブラウン(一部グリーンも。)が、所々掠れたようになっているのがお分かりいただけるでしょうか・
前面裏側
背面裏側
裏側には塗色が掠れた部分が全くありません。
これは…
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この時代の物としては、納入年度・NSNやブロードアローの記載がありませんね。
襟には例によってウールが縫い付けられています。
でもウールの生地が官給品とは少々違っていますね。
襟はジッパーで立てることができます。
ジッパーの刻印
官給品によく使用されているメーカー製です。
(まさかこのスモックはベルギー製?)
エポレットはテーパー付きのラウンドタイプ
官給品のマホガニーブラウンプラスティックボタン。
空挺マーク
(通称パラ・ウイング)
袖は急激に絞られて袖口はニット仕様
胸ポケット
角度が付いていて、ダットファスナーで開閉
ポケット本体中央部にも掠れたような塗色が見えます。
でもポケットフラップでマスクされていますね。
腰ポケット
胸ポケットとは逆に角度が付いています。
こちらもダットファスナーで開閉
テイルピース用ダットファスナー
テイルピース
使用しない場合の ダットファスナーも完備
(大戦モデルには付いていないものもありました。)
テイルピースは、日本の褌のように後ろから股間を通して前で留めます。
裾のバタ付きや捲り上がりを防ぐのが目的ですね。
裾の左右には、サイズを調整するタブがあります。
ここは官給品同様、使用しない場合に留めておく ダットファスナーがないですね。
テイルピース格納用ダットファスナー
内ポケット
やはり塗色の掠れはありません。
ダットファスナー裏側の刻印
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3 その特徴とは?
迷彩は、ダークイエローの生地に、レッドブラウンとグリーンで大まかな雲型を描いています。
また、各色の境目は、斑点にして意図的に輪郭をぼかしていますね。
(後のDPMにも通じるものがあります。)
グリーンと、ブラウンの重なるところは、濃いマホガニーブラウンになっていますよ。
今回のモデルは、このパターンに前のオーナーが、レンドブラウンとグリーンの染料を用いて、刷毛で掠れたパターンをタッチアップ(加筆)しています。
まるで、大戦中のパターンを思い起こさせるような感じにしていますね。
何が狙いなのでしょうか?
少なくとも、迷彩効果向上のためではなさそうですね。
生地は、おそらく官給品と同じか同等(そっくりです。)のデニム生地です。
デザインは、1944型デニソンスモック以降の前面がフルジッパーのタイプ。
構成は、エポレット付き、胸ポケット×2、腰ポケット×2、内ポケット×2、テイルピース付きです。
モデル品としてみた場合、生地や細部もとても良くできていますね。
前オーナーのタッチアップさえなければ…。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1970年代
製造場所 ベルギー?
契約会社 イギリス
製造会社 ベルギー?
材 質 コットン
ウール
表記サイズ 1
(日本人のL〜XL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約78cm
肩幅 約53cm
身幅 約64cm
袖丈 約64cm
状 態 中古極上品
官民区分 民生品
入手場所 海外オークション
入手難易度 4(極めて困難)
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5 まとめ
これは私見ですが、前オーナーは戦後型のモデル品を加工して、数が少なくなった大戦中モデルに仕立て、高額で売買しようとしていたのではないでしょうか?
(残念ながら東洋の中年マニアに数千円で落札されてしまいましたが…。←送料の方が高かったりして…😎)
でもタッチアップも中途半端でしたし、どうみても戦後型のモデル品だったので、目の肥えたマニアは誰も購入しませんでしたね。
(明らかに大戦モデルとは違った迷彩パターンでした。)
もう一つ。
先に戦後型デニソンスモックのモデル品は傑作揃いというお話をしました。
これも私見ですが、戦後型デニソンスモックは、本当はまだまだ生産される予定だったのではないでしょうか?
しかし1960年代には、軍が新型迷彩DPMを採用したスモックの生産を開始しましたね。
そのため、戦後型のデニソンスモックは用途廃止になってしまったようです。
しかし継続生産の態勢だった納入業者は、苦肉の策で余剰の官給品迷彩生地を用いたデニソンスモックをモデル品として製造したのではないでしょうか?
前述の通りDPMが採用されても、しばらく空挺ベテランは戦後パターンのデニソンスモックを愛用していました。
また、機能的に優れたデニソンスモックは、民間の狩猟用にも使われたようですし、映画の撮影にも使用されたりしましたね。
つまり、まだ需要があったようです。
そのための、モデル品だったのでは?
真相はともかく、迷彩服としてみた場合、やはりある程度の効果がある迷彩服と言えます。
サバイバルゲームのみならず、狩猟や野鳥観測にも普通に使えそうですね。
戦後のイギリス軍を再現するヒストリカルゲームにも使えそうですよ。
幸いな事に、戦後型のモデル品は現在でも多く出回っています。
大戦型に比べて入手は比較的容易ですよ。
(それでも困難なのですが…。)
ただ、中には今回のモデルのように、まるで官給品のように良く出来た製品もありますので要注意です。
何故なら、良質なモデル品を、戦後モデルの官給品デニソンスモックとして、高価で販売されている場合があるからです。
官給品か、モデル品か識別できない場合は、あるいは購入しない方が良いかもしれませんね。
(メーカーによっては、モデル品専用のタグを付けているところもありますの、購入はそちらにしましょう。)
勿論、デニソンスモックコレクターのあなたには無問題ですけど、念のため。
今回は、イギリス軍の戦後型デニソンスモックの残念なモデル品を分析しました。
いやー軍装品のモデル品って、本当に面白いですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20231226更新)
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参考:他のイギリス軍デニソンスモックのモデル品(大戦中モデル)に関する記事はこちらです。⬇︎
大戦中から戦後の官給品デニソンスモックに関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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