今回は、1940年代のイギリス陸軍空挺迷彩スモック(デニソンスモック)を分析します。
以前分析した大戦中モデル(カスタム)と同時期の製品ですね。
でも袖のデザインや裁断が少し違うタイプです。
80年前の中古ですが、使用感少ない極上品ですよ!!
目次
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1 イギリス陸軍空挺迷彩スモック(デニソンスモック・戦中モデル・袖ニットなしタイプ)とは?
第二次大戦中の1942年に開発(諸説あり)され、空挺部隊のみならず狙撃兵や一部の特殊部隊員にも支給されたデニソンスモック。
第二次大戦中のイギリス軍において、最も使用された迷彩服でした。
その機能や効果から戦後もイギリス軍のみならず、多くの国(主にイギリス式軍装を採用した国)でも使用された…というのは、当ブログでも記事にしましたね。
そんな大人気のデニソンスモックですが、パーツや裁断の違うマイナーチェンジはともかく、大戦モデルは袖のデザインで大きく
- 袖口がニットのモデル
- 袖口にニットがなく、タブとボタンで調整するモデル
という二種類に分かれていることで知られていますね。
今回のモデルは、後者のモデルになります。
以前分析した大戦モデルとは、他にも違った箇所がありましたよ。
さてさて、それはどんなデニソンスモックなのでしょうか?
今回は、コアな大戦中のイギリス軍装備マニアのみならず、迷彩服初心者のあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
背面
前面裏側
背面裏側
濃い迷彩生地の部分はライニングで二枚合わせになっています。
よく見ると前面と背面、側面と袖では使用されている生地が違っていますね。
襟周りレイアウト
襟の内側(肌に接触する箇所)には、アンゴラウールのライニングが。
イギリス軍ウールシャツの生地に似ていますね。
襟はジッパーで立てることができます。
フロントは胸部までジッパーで開閉可能。
(当時から裾まで開くフルジッパーにカスタムされることが多かったですね。)
ジッパー
不自然に汚れているタグ
表記では1943年度契約品ですね。
生地裏には不鮮明ながら官給品を示すスタンプあり。
エポレットはテーパー付きのラウンド型。
胸ポケット
角度が付いていてダットファスナーで開閉。
腰ポケット
胸ポケットとは反対方向に角度が付いていますね。
こちらもダットファスナーで開閉。
袖
緩やかなテーパー付き。
袖口
タブとボタンで調整
脇の下の通気孔
刺繍で6個です。
内ポケット
左右にあります。
前見頃下部のテイルピース用ダットファスナー
表面が明るいグリーン(ダックエッググリーン?)に塗装されていますね。
左右の生地が斜めになっていることに注意。
裾左右にあるサイズ調整タブとダットファスナー
タブを留めるとこんな感じです。
これは裾のバタつき防止ですね。
ダットファスナー凸側
ダットファスナー凹側
有名な「NEWEY」製。
エポレット及び袖のボタン
カーキの皿型プラスティック製。
テイルピース
背面に固定した状態。
テイルピースを展開した状態。
テイルピース固定用ダットファスナー。
当初はこの固定用ダットファスナーがありませんでした。
テイルピースは股間を通して、前見頃裏側のダットファスナーに留めます。
これはパラシュート降下時に、裾のめくり上がりを防ぐのが目的でしたね。
迷彩生地の違い
今回のモデルには、2種類の迷彩生地が使用されていました。
側面部分は各色が明るい生地ですね。
(カラーは、デニソンスモック戦後型に似ていますね。)
また迷彩パターンには、グリーンとブラウンの他に、カーキのようなカラーも使用されていますね。これは?
袖生地の一部には、染料が裏側まで染みていました。
迷彩パターン
大まかですが部分的に繊細な面白いパターンですね。
着用例
(映画「遠すぎた橋」のアンソニー・ホプキンス)
袖と前見頃の生地裁断に注意!
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3 その特徴とは?
迷彩はタン(またはダークイエロー)の生地にレッドブラウン、ダークグリーンを用いてハケで勢いよく塗ったようなパターンを描いています。
今回のモデルには、色調の違う二種類の生地が使用されていました。
生地は防風織したデニムで、やや重いですね。
デザインは、エポレット付き、胸ポケット×2、腰ポケット×2で、襟の内側にはウールの生地を縫い付けてあります。
今回のモデルは、袖口にニットを使用していないモデルで、袖口の開閉はタブとボタンで行います。
加えて、前面及び背面の生地は左右で縫い合わされているタイプですね。
(身体の中心線にステッチがあります。)
生地裁断比較
前面
以前分析したモデル前面
プルオーバーからフルジッパーに改造されていますが、一枚生地だったので迷彩パターンが概ね繋がっていますね。
今回のモデル背面
以前分析したモデル
以前分析したモデルは、背面が一枚生地でした。
同じ空挺迷彩スモックなのですが、どうやら迷彩生地の裁断は製造メーカーで違っているようですね。
またこうして見ると、大戦中のデニソンスモックには数種類の迷彩パターンがあったようです。
全体的な縫製は、かなり雑で不正確ですが、必要な強度はあるようです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1943年?
製造場所 イギリス
契約会社 イギリス
製造会社 〃
材 質 コットン
ウール
表記サイズ 8
(日本人のXXL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約94cm
肩幅 約59cm
身幅 約78cm
袖丈 約65cm
状 態 中古極上品
官民区分 官給品
入手場所 香川のリサイクル
ショップ
入手難易度 3(困難)
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イギリス軍 空挺兵 デニソン 初期モデル タイプ1 スモック ジャック (M)
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5 まとめ
以前分析したフルジップにカスタム化されたモデルは胴体部分の生地が合計4枚で仕立てられていました。
今回のモデルは、胴体部分が6枚の生地で仕立てられていますね。
前者は意外にダークイエロー(またはタン)の面積が多く、場合によっては目立つこともあったかもしれません。
しかし今回のモデルはやや面積の小さい生地を縫い合わせて仕立てられているので、やや暗めの色調になったのかもしれませんね。
また、一般的なデニソンスモックは、当初袖ニットが標準装備でした。
ある程度の高度からパラシュートで降下するわけですから、冷気の侵入を防ぐためには必要不可欠な装備と言えます。
(冬に袖が開放されているジャケットでバイクに乗ると、とても後悔します。😅)
その点、今回のモデルはストラップとボタンで調整する仕様となっています。
これは意外に面倒ですし、防風効果も疑問ですね。
では、なぜ今回のモデルのような袖が採用されたのでしょうか?
その原因は…不明です。
かつては、空挺部隊員とその他の兵科で分かれていた…とか、製造時期によって違う…などという説もありましたが、どれも決定的なものではありませんでした。
ただ戦後、ベルギーなどでコピーされたデニソンスモック型空挺スモックは、その殆どが今回のモデルのような袖デザインでしたね。
1970年代ベルギー陸軍空挺迷彩スモック
(袖のデザインがボタンで留めるタイプですね。)
もしかしたら、このデザインの方が使い勝手が良いのかもしれませんね。
(ニットは破損した場合の修理が難しいかも。🤔)
さて、大戦中のデニソンスモックですが、年々入手が困難になりつつあります。
それでもかなりの使用感のある個体なら、国内のオークションでかろうじて入手は可能ですよ。
また海外のオークションでは、国内より多く出品されているタイミングもあります。
現在では、海外オークションの代行業者も存在するので、英語が苦手な方でも取引できそうですよ。
(手数料は掛かりますが…。😅)
ところでデニソンスモックも、これまで多くのモデル品が製造されましたが、戦中型は何故か出来が良くないものばかりでした。
(逆に戦後型は傑作揃いなのですが……🤔)
モデル品は全くおすすめできませんね。
幸いにも大戦中のドイツ武装親衛隊の衣類に比べると、まだ安価なデニソンスモック。
官給品は辛うじて入手可能です。
探しているあなたは、しっかり資金を貯めて程度の良いものを購入しましょう!
大戦型のデニソンスモックは、イギリス軍装備や迷彩服の歴史を語る上で、必要不可欠なアイテムです。
ぜひあなたもぜひ入手してみてください!
今回は第二次大戦中のイギリス陸軍空挺迷彩スモック(デニソンスモック)を分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
(20240930更新)
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参考:他のイギリス陸軍デニソンスモック(モデル品を含む)に関する記事はこちらです。⬇︎
デニソンスモックを参考にした各国の迷彩服に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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