今回は、1990年代のドイツ海軍HBTユーティリティージャケットを分析します。
以前分析した旧ソ連空軍レザーフライトジャケット(暖候期用)と同じモデルですが、今回は幻(?)のライナー付になります!
入手できたのは偶然ですが、これもある意味奇跡かもしれません。
実際にパイロット(?)が着用していたもので、破損・修理箇所がありますが、まだまだ着用可能ですよ!
目次
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1 旧ソ連空軍レザーフライトジャケット(暖候期用・専用ライナー付)とは?
かつての「冷戦」時代における旧ソ連軍は恐怖の対象でした。
何故なら
- ソ連軍に関する情報が少なく偽情報も氾濫
- 当時のソ連指導者による大言壮語
- 実際に一部の兵器の性能が神秘的に漏れ伝えられていた
などにより、恐怖が助長されていたようです。
そんな旧ソ連軍装も、やはり情報量が少なく日本に輸入された製品は、希少価値を加味されてどれも高価で入手困難品でしたね。
中でもとりわけ少なかったのが、各種パイロット装備でした。
時々航空雑誌などで紹介される、当時の(プロパガンタ臭のする)ソ連空軍の写真くらいしか資料がなく、いつか官給品を見てみたい、手にしてみたいと思ったものでした。
今回のモデルは、そんな憧れにも似た旧ソ連空軍がパイロットに支給した暖候期用の軽量なレザーフライトジャケットになります。
さすがに今から50年前の製品なので、ライニングや専用ライナーは破損が酷いですが、おそらく本邦初公開かと思われます。
さてさて、それはどんなレザーフライトジャケットなのでしょうか?
今回は、旧ソ連空軍装備マニアのみならず、フライトジャケットコレクターのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
使用感からくる迫力が半端ないですね。
やはり着丈が長いのが特徴です。
背面
レザーは各部に艶が出てきつつありますよ。
前面裏側
(ライナーなしの状態)
さすがにライニングは破損が多いですね。
背面裏側
一部には使用に伴う褪色があります。
襟周りレイアウト
前合わせはジッパーと裾のダットファスナー。
胸ポケットジッパープルタブ
金属製で、例の幾何学刻印。
裏側には滑り止め加工。
裏側に縫い付けられていたナンバー
シリアルナンバーでしょうか?
ライニングにある各種スタンプ
データスタンプ
モスクワ製で1974年度契約品です。
サイズは52ですね。
データスタンプ下のスタンプ
裏側襟元のライナー用ボタンホール
必ず三角形のステッチ付き。
ライニングのプリーツ
内ポケット
隠ボタンで開閉
ボタン
濃いマホガニーブラウンのプラスティック製。
前見頃裏側
ジッパーに沿ってライナー用ボタンホールあり。
背面裏側裾のライナー用ボタンホール
周りの三角ステッチの意味は?
胸ポケット
ジッパーで開閉。
右胸ポケット内側生地
ブルーのコットンツイル製
上部には別の細長いポケットがありました。
どうやらピストルのマガジン(弾倉)パウチを兼務しているようです。
左胸内側生地
ホルスター(拳銃入れ)を兼務しているので三角形ですね。
腰ポケット
オープンタイプ。
内側生地は胸ポケットと同じブルーのコットンツイル製です。
(褪色が酷いです。)
フロントジッパーのプルタブ
やはりワイヤー製
ジッパーエンドの金属製補強プレート
この補強も必要ですが、他の箇所も補強してほしかったような…。
裾のダットファスナー
袖
テーパー付き
袖口は別パーツですね。
袖口裏側
ラインングの損傷が酷いですね。
袖にもライナー用のボタンホールあり。
袖口の状況
コーティング剥がれやひび割れがあります。
脇の通気孔
金属製ハトメ付きで片側3個。
裾左右にはゴムを内蔵していますが、現時点では伸びきっています。
背面のアクションプリーツ
襟裏にはボアを取り付けるためのダットファスナー3個あり。
こちらのダットファスナー凸部は、ニップルタイプ
襟のコーティング剥がれ
やはり肌に接する部分は傷んでいますね。
右袖修理箇所
右袖修理箇所裏側
ここだけライニングが雑に開けられていて修理箇所を確認することができました。
レザーの裏側からパッチを当てていますね。
ライナー
前面
各部の破損や汚れがひどいですね。
背面
向かって左に大きな裂け目。
ライナーのスタンプ
ジャケットと同じに見えますね。
左右裾のゴムテープ
(…だったもの。現在は伸びきっています。)
裾ゴムはジャケットのみかと思ったら、ライナーにもありました。
この個体は、当初前合わせの一部(ストームフラップ・ウインドシールド)が糸で手縫いされていました。
いくつかのボタンは、ジャケットに取り付けるためのもの。
(一部が失われていました。😭)
背面にも破損あり。
前面・背面とも大きく破れていました。
でもこれでライナーの内部が判明。
濃いブラウンの薄い毛布のようなインターライニング。
袖口は先端を折り曲げて手縫いされていました。
おそらく袖からはみ出すのが嫌だったのでしょう。
ライナーの袖と胴体は色調の違う生地が使用されていました。
複雑な裁断。
前面裏側
前見頃のストームフラップ(ウインドシールド)
うなじ付近のループ
ライナーをジャケットに取り付けた状態
前面
ライナーを取り付けるとジャケットの内ポケットが使用できませんね。
背面
ライナー用ボタンは、全てライニングのボタンホールに留めます。
でも意外に時間が掛かりますね。
袖口
前オーナーは手首付近のニットが不快だったようです。
ライナー生地裏側
フランス軍M64パーカーのライナーに似た織り方。
糸で手縫いされていたストームフラップ(ウインドシールド)を通常状態に戻したところ。
裏側も傷んでいました。
ジッパーを開けるとライナーのストームフラップ(ウインドシールド)が見えます。
ジッパーを胸まで開けてジャケットを着用すると、少々カッコ悪いかも?
(だから折り畳んだ状態で固定し、普段は見えないようにしてあったのですね。)
袖には別の破損箇所あり。
着用例
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3 その特徴とは?
レザーは、おそらくゴートスキン(山羊革)で、ダークブラウンに染められています。
全体的に柔らかいですがしっかりしていて、なめしの技術も高いようです。
デザインは、エポレットなし、胸ポケット×2、腰ポケット×2、内ポケットで、裏側のほぼ全面にコットンツイルのライニングがありますが、インターライニング(中綿)はありません。
面白いのは胸ポケットで、左はホルスター(拳銃入れ)、右はマガジン(弾倉)ポケットがあるところですね。
(旧ソ連空軍パイロットスーツやフライトジャケットは、必ずこの仕様ですよね。)
また専用のライナーがあって、ライナーのボタンでジャケットに取り付けることができます。
ライナーは、コットンのシェルに毛布のようなライニングがあって、装着するとからり暖かそうですよ。
(現時点では、かなり破損しています。)
全体的な縫製は、繊細で丁寧な部分と、大雑把な部分が同居する面白い仕立てです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1974年
製造場所 旧ソ連
契約会社 旧ソ連
製造会社 〃
材 質 ゴートスキン
(山羊革)
コットン
ウール
表記サイズ 52
(日本人のL〜XL)
各部のサイズ(平置)
肩幅 約50cm
身幅 約60cm
着丈 約71cm
袖丈 約59cm
状 態 中古並品
官民区分 官給品
入手場所 名古屋の専門店
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
ジャケットの使われ方にもよると思いますが、全般的に旧ソ連軍製品は同時期のアメリカ軍フライトジャケットに比べて、耐久性が低い気がします。
今回のモデルも、特にライニングの破損や劣化がひどいですね。
1974年度納入と考えても明らかに程度が悪く、まるで第二次大戦中の製品みたいな印象を受けます。
(大戦中のA-2レザーフライトジャケットの方が、平均的にまだ原型を留めているかも?)
もしかしたら酷使された個体だったのかもしれませんが…。
じつは冷戦時代に恐怖の対象であった旧ソ連軍の各種装備や兵器も、全般的に西側の兵器より性能や耐久性が低かったと後々の戦争・紛争で分析されていますね。
(ましてや旧ソ連から他国へ輸出された兵器は、意図的に性能を低下させたモンキーモデルだったことも判明しています。これはロシア軍でも続いているという情報もあり。)
今回のモデルはフライトジャケットなので兵器と比べるべきものではありませんが、デザインはともかく耐久性は少々低かったような印象があります。
でも、なかなかカッコ良いレザーフライトジャケットだと思いませんか?
それはともかく、私自身このレザージャケットが令和になってもう一着入手できるとは思っていませんでした。
やはり「奇跡」ってあるのかも?
…と思いたいところですが、じつは海外のオークションでは、数は少ないものの不定期に出品されていますよ。
探しているあなたは、日本で待つより資金を貯めて海外オークションに入札した方が早く入手できるかもしれません。
(現在では代行してくれる業者さんもありますから気軽ですね。)
ただ今回のモデルもそうですが、かなりの使用感、破損、汚れがあるものが多く、ちゃんとチェックしなければ、粗悪なジャケットを掴まされる可能性があるので要注意ですね。
(外国では騙される方が悪いというスタンスです。お気をつけて!)
私は、同じモデルのライナー付きで、中古極上品かデッドストックのサイズ「50」を探してみたいと思います。
今回は、既に崩壊してしまった旧ソ連空軍のレザーフライトジャケット(暖候期用・ライナー付)を分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
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参考:他の旧ソ連運パイロット装備に関する記事はこちらです。⬇︎
他の旧ソ連軍装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍のフライトジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の防寒装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍のレザージャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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