今回は、1960年代のイギリス軍迷彩ジャケットを分析します。
一般兵科用としては、P68のひとつ前の形式になります。
状態としては、中古極上品なのですが、ライニング生地変色の最中です。
汚れではありませんので、予めご了承下さい。
目次
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1 イギリス陸軍迷彩スモック(P60・DPMバージョン)とは?
アメリカと連携して、なんとか第二次大戦戦い抜いたイギリスでしたが、すぐに次の戦いが待っていました。
1950年から始まる、朝鮮戦争です。
主力はアメリカ軍でしたが、イギリス軍も国連軍の一員として参加しました。
(長砲身75mm砲搭載のセンチュリオン戦車が一際目立ってましたね!)
ところが、そこであらぬもの(?)を目撃します。
当時のイギリス軍は、概ね大戦中の装備そのままで参加したのですが、アメリカ軍は近代的でシステマティックな戦闘服を装備していたのです。
(M51シリーズのことです。)
少なからず、自分たちより軍事後進国、質より量の軍隊…と見下していたアメリカ軍の装備は、自分たちより遥か先を進むものだった…という事実にイギリスは強い衝撃を受けます。
朝鮮戦争後、早速イギリスは新しいコンセンプトの戦闘服開発に乗り出しました。
そして1960年代に採用されたのがP60スモックです。
(それまでにも同種の試作品的なスモックは製造していたようです。)
当初P60スモックは、OG(オリーブグリーン)の生地で製造されていました。
しかし今回のモデルは、1960年代中期にDPMが正式に採用されたのを受けて、生地をDPMに変更したモデルになります。
そこはかとなく、アメリカ軍M51フィールドジャケットやデニソンスモックの面影がありますよ!
さてさて、それはどんな迷彩スモックなのでしょうか?
今回は、イギリス軍装備マニアのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
相変わらず素敵な迷彩ですね。
背面
前面裏側
左右の胸ポケット裏に、内ポケットがあります。
ライニングは、上半身主体のいわゆるハーフライン。
裾付近は、生地の裏側が見えますが、迷彩がかなり透けていますね。
背面裏側
臀部のライナーは、ポケットになっていますよ。
前合わせはジッパーとボタンです。
タグ①
既にNSNとNATOサイズが入っていますね。
タグ②
襟はチンストラップで立てることができます。
(ただし、正面に隙間あり。)
エポレットは、テーパー付きでラウンドタイプです。
デニソンスモックに似ていますね。
胸ポケット
角度付きでボタンで開閉
ポケットの下端はラウンドタイプです。
腰ポケット
こちらも胸ポケットとほぼ同様ですが、ポケット口にゴムが内蔵されています。
また、下部にはタックが2本入っていますよ。
旧ローデシア軍のスモックは、このモデルを参考にしたのでしょうか?
肘の補強生地は円形です。
袖口はマチ付きでボタンで開閉・調整
襟裏側
チンストラップは小さいボタンで固定されます。
襟の何本もある独特のステッチに注意
イギリス軍の新旧官給品ボタン
左:新型
右:旧型
チンストラップは、別の小さなボタンでした。
ブラウンのプラスティック製
ジッパースライダー
刻印は「NZ」
裾のマップポケットのボタン
ウエストと裾のドローコード
太い紐です。
内ポケット
左右にあります。
ライニング生地の色が汚いですが、本来のODが褪色中で、色ムラが出ているだけです。
汚れやカビではありません。
防虫剤などでも褪色するようですね。
このようにP60のライニングは、時間とともにブラウンに変色していくタイプがあります。
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3 その特徴とは?
迷彩は、生地も含めてP68に使用されている 防風生地のDPMです。
配色は、ダークイエローをベースに、レッドブラウン、グリーン、ブラックを刷毛で丸く塗ったようなパターンは変わりません。
(美しいですね!)
デザインは、簡単に言えば、デニソンスモックとM51フィールドジャケットを合成したような造りですね。
構成は、胸ポケット×2、腰ポケット×2、内ポケット×2、背面裾裏側の大型ポケットですが、左胸ポケットにはペンポケットがあります。
全体的な縫製は、とても正確かつ丁寧で、襟のステッチなどは過剰なほどです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1960年代
製造場所 イギリス
契約会社 イギリス
製造会社 〃
材 質 コットン
表記サイズ 1
各部のサイズ(平置)
着丈 約71cm
肩幅 約45cm
身幅 約56cm
袖丈 約58cm
状 態 中古極上品
官民区分 官給品
入手場所 海外のオークション
入手難易度 4(極めて困難)
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5 まとめ
朝鮮戦争を、分厚いウールのバトルブラウスで戦闘したイギリス軍歩兵。
でもP60の採用で、より近代的な戦闘服を装備することができました。
ただし、試作品的な存在だったのでしょうか?
その後、時を経ずP68を採用したところを見ると、やはり防寒性能とか少々不備な点があったようですね。
でもこのスモックがP68の原型になっているのは、細部を見るとよくわかります。
でもデニソンスモックのようなテイルピースはなく、まだイギリス色が出ていないスモックと言えますね。
実際に着用してみると、ライニングは少ないのに重量のあるスモックですよ。
前身頃のジッパーは、やや中途半端ですね。
もう少し長い方がしっくりきます。
またM65のマジックテープや ダットファスナーに慣れている私は、各ボタンの取り扱いが少々面倒でした。
さてP60スモックですが、今回のDPMモデルも、OGモデルも近年では品薄です。
程度の良いものは、とても高価になりつつあるので注意が必要ですね。
購入される場合は、早目に行動しましょう!
また、デッドストックは見つけたら少々高価でも手に入れておくべきだと思います。
(将来、きっと助けてくれますよ!)
今回は、イギリス陸軍の古いP60迷彩スモックを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20231218更新)
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参考:OG単色版のP60スモックに関する記事はこちらです。⬇︎
戦後のイギリス軍迷彩スモックに関する記事はこちらです。⬇︎
イギリス軍が影響を受けたM51フィールドジャケットはこちらです。
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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