今回は、1980年代のドイツ陸軍山岳兵用防寒トラウザーズ(オーバーパンツ)を分析します。
以前分析したドイツ陸軍山岳猟兵用パーカーとペアで使用する衣類ですね。
最近多く見掛けるようになりました。
まさかのデッドストックですよ!
目次
スポンサーリンク
スポンサーリンク
1 ドイツ陸軍山岳兵用防寒防寒トラウザーズ(オーバーパンツ・OD)とは?
その昔、制服で戦争していた頃の防寒方法としては、制服の下に着込むか、制服に準じたコートを着用するのが普通(常識)でした。
ただし、それでは状況に応じた細かい体温調節が困難でしたね。
(当時は、制服(国軍の証)を敵に示す…ということ自体が重要でした。)
しかし第二次大戦くらいからは、レイヤード(重ね着)システムが主流となりました。
先陣を切ったのは、やはりアメリカ軍でした。
有名なM43シリーズや後のM51シリーズの装備がそうでしたね。
戦闘服やセーターの上にフィールドジャケットやライナー付きパーカーを重ね着していましたよ。
ボトムには通常のトラウザーズの上に、防寒トラウザーズ(オーバーパンツ)を着用していました。
以降、アメリカ軍のみならず、世界の軍隊における防寒装備の標準となりました。
現在では、洋の東西を問わず世界的に採用されているシステムですね。
今回のモデルは、旧西ドイツ陸軍が山岳猟兵に支給した防寒トラウザーズになります。
やはりオーバーパンツ型のデザインが特徴です。
ただし他国に比べて、とても割り切ったデザインになっているのが面白い一品です。
さてさて、それはどんな防寒トラウザーズ(オーバーパンツ)なのでしょうか?
今回は、旧西ドイツ軍装備マニアのみならず、動きやすく暖かいオーバーパンツをお探しのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
前面
背面
前面裏側
裏側のほぼ全面にボアのライニングがあります。
(ボアは取り外しはできません。)
背面裏側
ウエスト周りレイアウト
前合わせはありません。
斬新ですね。
ベルトループはなく、ウエストは左右のマジックテープとストラップ及び内側の平紐で調整します。
テープはおそらくナイロン製でHBT(ヘリンボーンツイル:杉綾織)生地。
ウエスト内側左右には、ボタンで開閉するタブがあります。
サスペンダー用ですね?
タグ表と裏
1987年度契約品です。
左右には上下から開けるようジッパーがあります。
(下部から開いた状態です。)
これなら防寒ブーツを履いたままでも着脱が容易ですよね。
一方、上部から左右を開放すると、トイレも無問題ですね。
ジッパー
上下でプルタブが違っています。
刻印は珍しく「YKK」
正しい選択ですね。
ジッパーは上下のエンドで分離させることはできません。
左側面
ポケットは一切ありません。
ここは賛否両論ですね。
裾にもマジックテープで開閉・調整するタブがあります。
でも調整量は少ないですね。
裾内側には、半円形のナイロン生地で補強されています。
ここはブーツで擦れるので有難いですね。
ウエスト内サスペンダー用のボタン。
内側のボア。
これは一般兵科用防寒パーカー(後期型)に使用されているものと同じですね。
デッドストックながら廃品(?)を示す「A」というスタンプが押されています。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
3 その特徴とは?
シェルは、ODのおそらくコットンとナイロンの混紡で、山岳兵用パーカーのシェルと同じ生地です。
軽量で防風性能も高そうですよ。
カラーも山岳兵用パーカーと同じですね。
未使用・新品の状態では、わずかながら撥水性もあります。
一方ライニングはボアで、これは一般兵科用防寒パーカーのライナーと同じものですね。
(ただし今回のモデルは、ライニングとシェルを分離させることはできません。)
デザインは、ポケット類は一切なく、しかも前合わせもありません。
その代わり、サイドには上下から開くダブルジッパーがあって、トラウザーズの脱着を容易にしています。
(トイレ時に便利ですよ!)
前合わせがない分、前面からの風は確実に防いでくれますね。
面白いところでは、ウエスト部はマジックテープとストラップで調整するのですが、別に紐も付属しているところです。
(イギリス軍に多い装備ですね。)
勿論、サスペンダーを取り付けるタブやボタンもありますよ。
全体的な縫製は、とても丁寧かつ正確で、高い技術で仕立てられています。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1987年
製造場所 ドイツ
契約会社 ドイツ
製造会社 〃
材 質 コットン
ポリエステル
表記サイズ 5
180/195-78/85
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
ウエスト 約42cm
着丈 約103cm
股上 約32cm
股下 約74cm
裾幅 約23cm
状 態 デッドストック
官民区分 官給品
入手場所 東京の専門店
入手難易度 1(容易)
スポンサーリンク
ドイツ軍 マウンテン オーバーパンツ ユーズド 裏ボア GERMAN ARMY MOUNTAIN OVER PANTS (GERMAN-MOUNTAIN-OVERPT)
スポンサーリンク
5 まとめ
この山岳兵用防寒トラウザーズに関しては、面白い現象が発生していますね。
以前は、使い古されたお世辞にも美品とはいえない(どちらかというとボロボロで、しかも高価な!)ものが多かったのですが、今回のモデルはデッドストックでした。
しかも安価に入手できましたよ!
そう思って調べてみると、なんとドイツ本国から大量に払い下げられていて、日本にもまとまった数が輸入されているようですね。
大手通販サイトでも、デッドストックが普通に(それも安価に)販売されていて、驚きました。
(苦節(?)30年、やっとこの日が来ました!)
どうやら一連の山岳猟兵用OD単色装備は、とうとうお役御免(用途廃止)になったようです。
(今回のモデルも廃品(?)を表すスタンプが押されていました。)
これは入手するチャンスといえますね。
それはともかく今回のモデルは、公共交通機関の暖房が発達した現在の日本の日常では、ややオーバースペック感があります。
(北日本や山岳地を除く。)
でも、真冬の屋外では普通に使用できそうですよ。
インターライニング(中綿)が入っていないので動きやすいのもポイントですね。
私は、今回のモデルをバイク通勤で使用してみました。
雨や雪は経験していませんが、防風性能は必要十分でしたよ。
また、履きやすくて脱ぎやすいのもポイントですね。
ただしウエストのマジックテープ付きタブは着脱時には意外に面倒で、何らかのカスタムが必要性だと感じました。
(例えば、タブを開放したままにしておくため、タブとウエストの表面にもマジックテープを追加するとか…。)
また外側にポケット類が一切ないので、ガソリンスタンドやコンビニでは手こずる場面も。
この辺りが評価の分かれ目になりそうです。
次は悪天時に使用してみたいですね!
勿論、1980年代の旧西ドイツ軍山岳猟兵の再現、野鳥観測やキャンプなどの真冬のフィールドでの使用もおすすめですよ!
今回は、旧西ドイツ陸軍山岳兵用防寒トラウザーズ(オーバーパンツ)を分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
(20221223更新)
スポンサーリンク
スポンサーリンク
参考:ドイツ陸軍山岳猟兵用装備に関する記事はこちらです。⬇︎
同時期のドイツ陸軍一般兵科用防寒パーカーはこちらです。⬇︎
他国の防寒トラウザーズに関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
スポンサーリンク
スポンサーリンク