今回は、1970年代のアメリカ陸軍熱帯用パイロットスーツを分析します。
おそらく、アメリカ軍内で最も早く難燃繊維が導入された被服(衣類)ですね。
今回のモデルはベトナム戦争で主に使用された初期型になります。
少々汚れやシワがありますが、デッドストックですよ!
目次
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1 アメリカ陸軍熱帯用パイロットスーツ(セパレート・OG-106・初期型)とは?
ヘリコプターが実践に投入されたのは、朝鮮戦争が最初だと言われていますね。
でも本格的に多用されたのはベトナム戦争でした。
テニスコートくらいのスペースがあればピンポイントで離着陸可能、場合にとっては着陸しなくてもホバリング(空中浮遊)でも物資や人員の上げ降ろしができるヘリコプターは、それまでにない革新的な航空機でしたね。
しかし同時に多くの問題も浮上しました。
それは離着陸時には低速になり標的になりやすく、かつアルミ合金と航空燃料で燃えやすいということでした。
百歩譲って航空機はともかく、火災によるパイロットの損失は軍にとって大きな痛手でしたね。
そこでアメリカ軍が取った策は、ヘリコプターの武装化と搭乗員の保護でした。
今回のモデルは、そんなヘリコプターパイロットやエアクルーを機体火災から保護するために開発されたパイロットスーツ…の初期型になります。
アメリカ海軍が難燃繊維を用いたフライトジャケットの開発に先行する形で開発されました。
さてさて、それはどんなパイロットスーツなのでしょうか?
今回は、アメリカ軍装備マニアのみならず、コアなベトナム戦争装備マニアのあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
シャツ
前面
どことなく、デザインがOG-107ユーティリティージャケットに似ていますね。
背面
前面裏側
背面裏側
襟周りレイアウト
襟はチンストラップで立てることができます。
チンストラップ用のマジックテープも準備されています。
前合わせはジッパーのみです。
ジッパーの後にはストームフラアップが見えますが、これは防寒目的ではなく、火災でジッパーが熱くなっても下の衣類や人体への影響を局限する工夫です。
タグ①
サイズとFSN(連邦物品番号)が記載されています。
タグ②
こちらは各種データが記載されています。
DPSC(ディフェンスパーソナルサポートセンター)製で1971年度契約品ですね。
胸ポケット
ボタンで開閉
袖
立体裁断ですね。
袖口はマジックテープで開閉・調整
袖ポケット
左袖にあります。
ジッパーで開閉
上部にはペン用のスリットがあります。
裾は表出しもできるスクエアタイプ。
ジッパーは「GRIPPER」
トラウザーズ
前面
スラントポケットのフラップと膝ポケットが特徴的ですね。
背面
前面裏側
背面裏側
前合わせはジッパーとボタンです。
タグ①
タグ②
こちらは1972年度契約品です。
前合わせにはカッタータグも!
デッドストックの証ですね。
ジッパーは「GENERAL」
なんと前合わせジッパーは上下から開くダブルジッパーでした。
腰スラントポケット
特徴的なポケットフラップ
ボタンで開閉
右膝ポケット
大腿部内側ジッパー
大腿部外側ジッパー
それぞれ別のポケット用です。
つまり、右膝ポケットは2重になっています。
左膝ポケット
保管時の汚れが…😅
こちらは大腿部内側ジッパーのみで開閉
ふくらはぎポケット
ジッパーで開閉
裾はマジックテープで開閉・調整
ヒップポケット
ボタンで開閉
ベルトループは通常の長さです。
ウエストのサイズ調整ストラップ
金属製バックル
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3 その特徴とは?
生地は「OG-106」という色番号のオリーブグリーンに染められた難燃ナイロンのツイルです。
(グリーンとありますが、かなりオリーブドラブに近いですね。)
ナイロン製なので吸湿性がなく、紫外線により茶色く褪色(変色)するのが特徴です。
デザインは、シャツがエポレットなし、胸ポケット×2、左袖ポケットで、前合わせはジッパーのみです。
チンストラップで襟を立てることができますよ。
これは防寒目的ではなく、火災で熱くなったジッパーから首を守るためのものですね。
同じ理由で、前見頃ジッパー背面にはフラップが設けられていますよ。
トラウザーズは、腰スラントポケット×2、ヒップポケット×2、膝ポケット3、ふくらはぎポケット×2で、足首はマジックテープで調整できますよ。
(これは便利ですね。)
面白いのは右膝ポケットで、2つのポケットが上下に重なった状態になっているところです。
(珍しいデザインですね。)
全体的な縫製は、やや雑で不正確ですが、強度は抜群ですね。
安定のアメリカ軍スタンダードな仕立てです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1971年〜72年
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 ノーメックス
表記サイズ シャツ
M–R
トラウザーズ
S–R
(日本人のM〜L)
各部のサイズ(平置)
シャツ
着丈 約75cm
肩幅 約44cm
身幅 約57cm
袖丈 約62cm
トラウザーズ
ウエスト 約37cm
着丈 約104cm
股上 約30cm
股下 約79cm
裾幅 約26cm
状 態 デッドストック
官民区分 官給品
入手場所 愛知の専門店
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
シンプルで好感の持てるスーツですね。
カバーオール(つなぎ服)ではなく、セパレートなのもより一般的で使い勝手が良いです。
でも、せっかく採用された今回のモデルですが、実際に熱帯(多くはベトナム)で使用してみると汗を吸わない繊維であったため、意外に不快だった様ですね。
(実際に真夏で着用したことがありますが、汗がずっと肌に残っている感じがして、かなり不快でした。😓)
また紫外線の影響で、直ぐブラウンに褪色(変色)してしまうのも問題でした。
(見た目が悪くなります。)
そのため多くのパイロットやエアクルーは、ジャングルファーティーグやタイガーストライプなどのコットン製衣類を着用していたようです。
だからでしょうか?
今日でもかなり程度の良い個体(場合によってはデッドストック!)が入手可能ですね。
面白い現象です。
(政府が考えた装備が、必ずしも前線の兵士の要望と合致しない…という、軍隊あるあるですね。)
ただ戦場で使用しない我々には、別の価値があるスーツと言えます。
キャンプなどの火気を取り扱う場合には、より安全な衣類ですよね。
(過信は禁物ですが…。)
またトラウザーズは、足首を外側からマジックテープで絞ることができるため、各種作業時には裾をどこかに引っ掛ける確率が減りそうです。
ポケットも多いので、夏場のバイクにも向いているかも。
意外に使い道のあるスーツですよ!
(勿論ファッションにもおすすめです!)
入手に関しては、サイズは限定されますが、上下とも大手通販サイトで入手可能です。
画期的なユニフォームであったにも関わらず、意外に安価で販売されているのも助かりますね。
ただしトラウザーズに関しては、デッドストックは極端に少なく、中古品でも程度の悪いものが多いです。
どうやら「使えるトラウザーズ」ということで、シャツより先に売れて行ったようですね。
でも安心してください。
このトラウザーズも、忠実なモデル品が販売されています。
(残念ながらノーメックス(難燃ナイロン)ではありませんが…😅)
当然ですがモデル品なので、僅かながらカラーにもバリエーションがあります。
官給品の使い勝手はそのままに、よりファッションに特化しているのが良いですね。
夏用のファッションや作業用衣類として、今から検討してみてはいかがでしょうか?
そうそう、官給品を購入した場合は、紫外線による褪色に注意してください。
不幸にして部分褪色してしまったり、そんな個体を購入した場合は、全体的に褪色させましょう!
(完全に褪色すれば、また違った渋さがありますよ!)
今回は、当時は画期的だったアメリカ陸軍熱帯用パイロットスーツを分析しました。
いやー軍装品って、本当に素晴らしいですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
(20231214更新)
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参考:同モデルの後期型に関する記事はこちらです。⬇︎
他のアメリカ陸軍難燃装備に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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