今回は、1980年代のアメリカ空軍フライトジャケットCWU-36P(初期型)の変色について分析します。
CWU-36Pとは、アメリカ海軍CWU-45Pから派生した、アメリカ空軍の軽量難燃フライトジャケットでしたね。
でもジャケットとしての機能には影響のない、ある特質がありました。
今回はコレクションの中から、その痕跡が顕著なモデルを準備しました。
使用感がありますが、初期としては程度は良い方ですよ!
目次
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1 アメリカ空軍フライトジャケットCWU-36P(初期型・2種)の紫外線による変色とは?
1970年代にアメリカ海軍が支給したCWU-45Pは、難燃ナイロンで製造された、最強のフライトジャケットでした。
しかし、使用する温度帯がインターミディエイト(+10℃〜−10℃)であったため、暖かくも少々厚いジャケットでしたね。
ちょうどその頃から航空機の機内空調装置の発達や、もっと高い温度帯(ライトゾーン:+10℃〜+30℃)での使用も考慮されるようになったため、より薄い(中綿を抜いた)モデルがアメリカ空軍で開発されました。
それがCWU-36Pでした。
この兄弟とも言えるジャケットには、揃って同じ特質がありましたよ。
それは、ジャケットが日射により変色するというものです。
アメリカ製ナイロン繊維は、日射により概ね茶色に変色する場合が多いですね。
(M65フィールドジャケットや海軍のA-2デッキジャケットなどもそうですよ。)
CWU-36P、-45Pのアラミド繊維も同様で、紫外線に当たり続けると極端に変色(褪色)してしまうことがあります。
特に空中戦のために大きく透明なキャノピー(天蓋)で視界を確保されている戦闘機パイロットは、より多くの日射を浴びるようですね。
中には、「塗装してるの?」と思うくらいトーンがはっきり分かれているジャケットも存在しますよ。
今回のモデル2種も、一部に変色が認められました。
さてさて、それはどんな具合に変色したジャケットなのでしょうか?
今回は、アメリカ軍のアラミド繊維製のジャケットやカバーオールをお持ちのあなたと一緒に、変色を確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
CWU-36P(その1)
前面
背面
前面裏側
背面裏側
襟周りレイアウト
右半身が顕著に茶色いですね。
前合わせはジッパーのみです。
ライニングと右半身の色調差に注意
タグ
1980年度契約品です。
胸ポケット
マジックテープで開閉ですが、ポケットフラップが重なっているところや、フラップの裏側は原色が残っていますね。
袖ポケット
こちらも全体的に変色しています。
袖
袖ニット
腰ニット
右袖ニットは、一部に穴が。
(ニットは消耗品!)
最初から縫い付けられているネイムタグ用マジックテープ
胸の部分拡大
やはり右半分(向かって左)の変色が激しいですね。
アクションプリーツ
初期型の特徴ですが、プリーツ内側は原色を残していますね。
袖ポケットと、プリーツ内側の比較
ジッパー刻印は「SCOVILL」の「GRIPPER ZIPPER」
CWU-36P(その2)
前面
こちらは、その1より全般的に変色が進んでいます。
背面
前面裏側
背面裏側
写真撮影忘れです。
後日アップします。
前身頃裏側の変色
どうやら前オーナーは、ジッパーを開放して着用していたようです。
そのため表に露出していた部分のライニングが変色していますね。
襟周りレイアウト
マジックテープの配置は空軍の規則に準じています。
前合わせ
タグ
こちらも紫外線や汗で黄ばんでいます。
(クリーニング済)
各種マジックテープ
胸ポケット
やはりその1と同じですね。
腰ニット
こちらの袖ポケットは、その1ほど変色はしていないように見えますね。
袖
左袖ニット
折り返してみたら、やはり大きく違った色調ですね。
ニットもノーメックスなので当然といえば当然ですが。
右袖ニットも同様です。
その2は、肩の変色が顕著でした。
アクションプリーツ内外
このジャケットは変色が顕著ではありませんね。
ジッパーはその1と全く同じものです。
シェルの生地
初期型は縦落ち(縦線が見える)が特徴でしたね。
ライニングの生地
メッシュ上で汗の乾燥を促進
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3 変色の特徴とは?
シェルは艶のあるセージグリーンのアラミドですが、初期型はやや色調が暗く、ビンテージジーンズのように縦落ちするのが特徴でした。
一方ライニングもセージグリーンのアラミドなのですが、こちらは独特のメッシュのような織り方で、より乾燥を考慮しています。
今回のモデルはどちらも、普段日射が当たりづらい部分である
- 襟裏
- 脇下
- ポケットフラップ裏
- ポケットとフラップの重なっている部分
- アクションプリーツ内側
は変色を免れているか、弱い変色で止まっています。
しかし上の写真のように、両ジャケットとも一部が変色しています。
パラシュートハーネスなどの跡がなく、その1は右半身の変色していることから、もしかしたら輸送機や爆撃機のパイロットが着用していたのかもしれませんね。
今回の二着は、契約年度も製造メーカーも同じですが、やはりパイロットによって大きく変色の状況が変わっていますね。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1980年代
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 アラミド
(難燃ナイロン)
表記サイズ M
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
着丈 約62cm
肩幅 約47cm
身幅 約60cm
袖丈 約66cm
状 態 中古良品
官民区分 官給品
入手場所 名古屋の専門店
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
この変色の一番の原因は、日射による紫外線を受けたことによります。
勿論紫外線なので、一般的な蛍光灯でも変色しますよ。
(むしろ日射より強く早い?紫外線カット蛍光灯なら、あるいは変色を遅らせることができるかも。)
この変色傾向は、勿論空軍ナイロンフライトジャケットMA-1、L-2B、海軍のWEP、難燃繊維製FRP-1、-4カバーオールなどでもありました。
でもアラミド繊維は、一般的なナイロンより、早く、大きく酷く変色するように思えます。
恐ろしいですね。
この日射による変色を避ける方法は、現在のところありません。
なるべく、日光や蛍光灯に当てないようにする…という消極的な方法しかないようです。
でもこれでは、せっかく大枚を叩いて購入したジャケットが、天気の悪い日か着用できないというジレンマを生じさせますね。
(日中なら曇っていても紫外線は注がれているので、万全というわけでもないようです。)
またオーナーによっては変色を逆手にとって、強制的に全ての面を満遍なく変色させている方もいますね。
でもまるで鋼鉄のような色調が、木片のような色調に変化するのは、少々納得がいかない気もします。
そこで、この夏ある実験を計画しました。
あなたもご存知の「アー◯ーオール」をジャケット(CWU-36P後期型)に塗って、変色の状況を確かめる実験です。
結果はこのブログで発表する予定ですが…期待しないでお待ちください!
でも、これで変色が免れれば、あなたのジャケットも正々堂々着て歩けますね。
頑張ります!
今回は、アメリカ空軍フライトジャケットCWU-36Pの紫外線による変色について分析しました。
いやー軍装品って、本当に楽しいですね!
それでは、また次回をお楽しみに!
(20240822更新)
追記(20240822)
お待たせしました。
紫外線による生地変色と二種類のコーティング剤の関係について実験してみました。
実験に使用する適切なジャケットがなかったので、新たにノーメックス製レプリカポケット(CWU-45P初期型用)を購入。
塗布したコーティング剤は以下の2種です。
(いつもバイクに使用している製品です!)
- アーマオール
- シュアラスター・ゼロフィニッシュ
購入したレプリカポケット
ちゃんとノーメックス製でした。
(雰囲気も抜群です!)
※勿体無いので、裏面を使用しています。
実験手順
- レプリカポケットに二種類のコーティング剤を区分けして塗布する
- その際には無塗布の箇所を設ける
- 真夏の炎天下(直射日光下)に20日間放置する
- 変色の状態を確認する
コーティング剤塗布区画
❶ 無塗布
❷ シュアラスター・ゼロフィニッシュ(一度塗り)
❸ アーマオール(二度塗布)
❹ アーマオール(一度塗布)
(中央部を養生テープ(二枚)でマスキングして別に無塗布部分も設けました。)
実験結果
養生テープでマスキングしていた箇所以外は、全て茶色っぽく変色していました。😭
ちなみに表側(日射が当たっていない表側ポケットフラップ)との比較は以下のとおりです。
養生テープ部分も、僅かに日光をと置いているため、弱く変色していますね。
アーマオールとシュアラスター・ゼロフィニッシュは、紫外線による変色を防止する効果がほとんど無いことがわかりました。
特にアーマオールは、ボトルに記載されている説明書によると、その特徴として
「オゾンや紫外線による日焼けや色あせ、ひび割れを防止します」
とあり、期待していました。
実際アーマオールは現在もバイクで使用していまして、プラスティックやゴム部分の劣化を防いでくれているので、かなり期待したのですが…とても残念です。
(ただアーマオールは、そのまま生地に塗布すると生地色が濃くなっていくことが判明。中期型でも初期型のような雰囲気に変えることができますよ!)
今回の結果を踏まえ紫外線による変色を抑えるべく、さらなるコーティング剤の発掘と、それに伴う実験をしていこうと考えています。
また次回を(気長に)お待ちください!
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参考:他のアメリカ軍の難燃装備に関する記事はこちらです。⬇︎
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読んでいただき、ありがとうございました。
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