
今回は、1950年代のアメリカ海軍WFS防寒パイロットスーツセット(J-WFS&T-WFS)を分析します。
以前分析したアメリカ海軍フライトジャケットJ-WFSより前のモデルですが、今回は上下セットになります。
独特のシェルカラーが特徴ですね。
実際にパイロットが使用していたもので破損や汚れがありますが、時代を考えると程度は良好ですよ!
目次
- 1 アメリカ海軍WFS防寒パイロットスーツセット(J-WFS&T-WFS・18342B(AER)・ライムグリーン)とは?
- 2 全体及び細部写真です!
- 3 その特徴とは?
- 4 製造とサイズのデータです!
- 5 まとめ
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1 アメリカ海軍WFS防寒パイロットスーツセット(J-WFS&T-WFS・18342B(AER)・ライムグリーン)とは?


長く軍装品のコレクションを続けていると、時々「何故?」と疑問を持つ装備を目にすることがあります。
例えば、スイス軍、旧チェコスロバキア軍、トルコ軍、ギリシャ軍の迷彩服だったりするのですが、当事者である国や軍は、費用や効果はては体裁にまでこだわり、熟考を重ねて採用を決定するのですね。
(それが正しいとか現状に即しているとかどうかは別にして…。)
それは超軍事大国アメリカ軍装備でも例外ではありません。
今回のモデルは、アメリカ海軍が1950年代に採用したパイロットを含むエアクルー用の防寒スーツセットになります。
正式な名称はなく、品名の頭文字を取ってジャケットを「J-WFS(Jacket-Winter Flying Suit)」、トラウザーズを「T-WFS(Trousers-Winter Flying Suit)」と略されていますね。
(どこかの市販品メーカーが根拠不明の「G-8」という呼称を用いていたので、一部日本では普及していますいますね。)
驚くべきはそのナイロン製のシェルカラーが鮮やかな「ライムグリーン」だというところです。
何故このカラーを採用したのか?…は不明ですが、私に取っては大きな疑問を伴って現在に至ります。
さてさて、それはどんな防寒パイロットスーツセットなのでしょうか?
今回は、アメリカ海軍パイロット装備マニアのみならず、フライトジャケットコレクター上級者のあなたと一緒に、確認していきましょう!
2 全体及び細部写真です!
J-WFS(ジャケット)
前面
シェルが明るく鮮やかなライムグリーンですね。
逆に襟、袖のニットが後のモデルより暗いカラーに思えます。

背面
着丈が短いですね。
目立ちませんが、肩口左右にはアクションプリーツがあります。

前面裏側
前見頃を除く裏側ほぼ前面にコットンODのライニングあり。
お腹の左右にあるトラウザーズとの連結タブに注意。

背面裏側
トラウザーズ連結タブは背面にもあります。

襟周りレイアウト
鮮やかなライムグリーンですが、所々に薄汚れ、金属部品に色移りあり。

襟はチンストラップとボタンで立てることができますが、しっかりしていませんね。

襟はニットなので破損や穴がありました。

前合わせはジッパーのみ。
縦ステッチのストームフラップ(ウインドシールド)が特徴的ですね。
空軍のMA-1や海軍のG-1とは違って左側にあります。

前見頃のストームフラップ(ウインドシールド)裏側

タグ
年度は記されていませんが、1950年代契約品です。

ジャケット内側にあるトラウザーズ連結タブ
ゴムテープにボタンホール。

ライニングがコットンなので、使用とともに破れたり穴が開いたりするのが欠点ですね。


フロントのジッパー
刻印は「CONMAR」

ストームフラップ下端にはジッパー引き上げ時のサポートあり。
ODのキャンバス製。

右胸ポケット
ダットファスナーで開閉。
ポケット口には折り返しがあります。
ダットファスナーのカラー(ブラス)がシェルに色移りしてきていますね。


右胸ポケット内にはサイズタグも。

左胸ポケット
こちらもダットファスナーで開閉。


左胸ポケット表面は2区画に分かれていて、向かって左側にはペン用ポケットあり。

裾にはゴムを内蔵。

袖
強いテーパー付。


袖ポケット
ダットファスナーで開閉


袖には何かに引っ掛けたのか穴が!😭
でも、これでインターライニング(中綿)がホワイトのポリエステル製であることがわかりました!

またニットもウールなので、破損や虫食いがありますね。

袖ニットは筒状で、後期型のような袖の切り込みはありません。

袖ニットの破損状況その2

背面のアクションプリーツ
かなり深いですが、左右はゴムで繋がっていません。

T-WFS(トラウザーズ)
前面
股上がとても長いですね。
また背面が前面より長いデザイン。
ジャケットの連結タブに注意。

背面
背面にも連結タブがあります。

前面裏側
トラウザーズもODコットンのライニングがあります。
向かって左の小スリットに注意。

背面裏側
裾にはニットもある二重裾。

ウエストは背面が上に張り出していて、低い姿勢をとった時に背中が開くのを防止しています。

前合わせはジッパーのみ。

ジッパーは上下から開くダブルジッパーです。

タグ下のODナイロン製ループ

タグ
こちらも年度が示されていませんが、1950年代契約品です。

側面レイアウト

腰スラントポケット
オープンタイプで内側生地は生成りです。


左ポケット内にはサイズタグあり。

左スラントポケットのスリット
おそらく電熱ジャケットのプラグを出す箇所かと。

左ポケット裏側のスリット
フラップがあって普段は閉じた状態。

ヒップポケット
ダットファスナーで開閉。


こちらもポケット内側生地は生成りでした。

足首前面のポケット
左右にあります。
ジッパーで開閉。


こちらのジッパーも「CONMAR」

裾にはゴムを内蔵

裾は二重で内側の裾はニット付き。
しかもニットの先端にはダットファスナーがあって、外側の裾に取り付け流ことができます。

ニットはOD、土踏まずを通すゴム紐はカーキ。

ジャケットと連結用タブ
2個のボタン付

前面左のタブは、一個だけ別のボタンが縫い付けられていました。

ウエストはゴムを内蔵。

股間付近には汚れが。
コールタールでしょうか?

上下を連結させた状態
ジャケットのゴムストラップとトラウザーズのストラップをボタンで連結します。
うーん、この方法は便利なのでしょうか?


上下セットアップ
前面
上下でシェルの色調が違っているのはご愛嬌ということで。😅

背面

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3 その特徴とは?
シェル上下ともは鮮やかなライムグリーンのナイロン製です。
一方ライニングは暗いODのコットン製で、好対照ですね。
勿論、シェルとライニングの間には、ホワイトのポリエステル製インターライニング(中綿)が入っていますよ。
デザインは、ジャケットがエポレットなし、胸ポケット×2、袖ポケットで、襟、袖にはニットを配し寒気の侵入を防いでいます。
シェルのカラーが鮮やかなので、ニットがとても暗く見えますね。
一方裾はゴム入りで意外にタイトです。
左胸ポケットは2気室に分かれていて、向かって左側にペン用ポケットがありますよ。
(海軍フライトジャケットあるある?)
ジャケット裏側には、トラウザーズと連結するためのボタンホール付きゴムテープが四枚縫い付けられています。
トラウザーズは、腰スラントポケット×2、ヒップポケット×2、脛(すね)ポケット×2で、裾はニットとゴムを内蔵した裾の二重になっていて、土踏まずを通すゴムテープもあります。
(現時点ではゴムテープが伸び切っています。)
面白いのは左腰スラントポケット内に、小さなスリットがあるところです。
おそらく電熱服のプラグやGスーツのパイプを出す箇所だと思われますが、詳細は不明。
トラウザーズ上部には、ジャケットと連結するためのボタンがついたタブが合計4本縫い付けられていますよ。
また股上がとても長く、着丈の短いジャケットを補うようなデザインになっているのは興味深いですね。
全体的な縫製は、丁寧な箇所と雑な箇所が混在する面白い仕立てです。
4 製造とサイズのデータです!
製造・契約年度 1950年代
製造場所 アメリカ
契約会社 アメリカ
製造会社 〃
材 質 ナイロン
コットン
ポリエステル
表記サイズ 42(J-WFS)
34(T-WFS)
(日本人のL)
各部のサイズ(平置)
J-WFS
肩幅 約50cm
身幅 約64cm
着丈 約61cm
袖丈 約61cm
T-WFS
ウエスト 約47cm
着丈 約124cm
股上 約46cm
股下 約73cm
裾幅 約9cm
状 態 中古良品
官民区分 官給品
入手場所 東京の古着屋
入手難易度 3(困難)
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5 まとめ
一番の疑問はシェルの「ライムグリーン」です。
なぜこのカラーが採用されたのか?…と考え始めると夜しか眠れません!
タイミング的には、1947年に空軍が新設、一時期新しいエアフォースブルーの衣類を多く採用していたことから、伝統ある海軍としても何か新しいことを始めてみたかったのしれませんね。
一説には、契約したメーカーで違っていたとか?
(真偽不明)

ただしベトナム戦争の状況を鑑みると、海でも山でも目立つこのカラーは、実戦向きではなかったようです。
後には後期型のようなOD(これもODとしては明るいカラーなのですが…。)に変更されましたね。⬇︎

トラウザーズ比較
左:今回のモデル(ライムグリーン)
右:その後のモデル(OD)


それはともかく、現時点ではシェルがライムグリーンのスーツセットは極端に数が減っています。
…と同時に程度の良いJ-WFS(ジャケット。後期型も含む)は、平均的にとんでもない価格で取引されることが多いですね。
(トラウザーズは然程でもありませんが…。)
今回のモデルは、世のフライトスーツの中でも「珍品」の部類に入り、生産数も後期型より少なかったことから希少性が増しているようです。
それでも全く入手できない訳ではありません。
どちらかというと、国内より海外のオークションやネットの古着屋さんをチェックしてみると、見つかる可能性が高いですよ。
探しているあなたは、計画的に資金を貯めてお気に入りのスーツを探してみましょう!
購入する場合は、サイズもさることながら上下のライニング破損をよく確認して購入を決定してください。
(ライニングの破損は、今回のモデルの一大欠点でしたね!)
私はライムグリーン上下セットのデッドストックを探してみたいと思います!
今回は、珍しいカラーのアメリカ海軍防寒パイロットスーツセット(J-WFS・T-WFS)を分析しました。
いやー軍装品って、本当に面白いですね!
それではまた、次回をお楽しみに!
(20250210更新)
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参考:他のJ-WFSに関する記事はこちらです。⬇︎
他のアメリカ海軍フライトジャケットやパイロットスーツに関する記事はこちらです。⬇︎
他のアメリカ軍装備に関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍のパイロットスーツに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍のフライトジャケットに関する記事はこちらです。⬇︎
各国軍の単色衣類に関する記事はこちらです。⬇︎
✳︎ ✳︎ ✳︎
読んでいただき、ありがとうございました。
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